6月15日

佐藤審判、祭典のピッチへ 初の映像判定「気負わず平常心で」

日本人唯一の主審としてロシア大会に選出された佐藤隆治さん=稲岡悟撮影

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 【モスクワ=河北彬光】サッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会二日目の十五日(日本時間十六日未明)に行われるポルトガル対スペイン戦の審判として、佐藤隆治(りゅうじ)さん(41)=愛知県阿久比(あぐい)町=が、国際サッカー連盟(FIFA)に初めて選ばれた。今大会は微妙なプレーを映像で判定する審判員「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」を初めて導入。難しい試合裁きが予想されるが、気負わず平常心で出番を待っている。

 本番に向けて審判団は、PKやオフサイドなど試合の場面を想定した練習や、VARも加わった実践練習を続けている。十五日の試合では、佐藤さんは選手交代などに携わる第四審判で出場する見込みだが、日本人で唯一、主審として選出されている。初の大舞台に「どんな気持ちになるのだろう。徐々に緊張感が高まってきた」と話している。

 佐藤さんが審判員の資格を取得したのは、筑波大サッカー部時代、指導していた少年チームから「大会で審判をしてほしい」と頼まれたのがきっかけだ。一度は愛知県立高校の体育教諭になったが、三年で辞めて審判に専念する道を選んだ。一級を取得後はJリーグをはじめ国内外で年間四十試合ほど主審を務め、アジア杯やU−20(二十歳以下)W杯、二〇一六年リオデジャネイロ五輪などの大舞台も踏んだ。

 今回のW杯の主審は三十六人。今後の試合で実際にピッチで笛を吹けば、日本人では歴代五人目になる。一試合で十〜十五キロを走る過酷な仕事。「みんなが百パーセント納得する判定は難しい」としつつ、「それでもうまく試合が終われると、次へのエネルギーになる」という。

 今大会で注目されるVARは得点などに絡む微妙な場面で映像を確認するが、最終判定はあくまで主審が下す。正確な判断が期待できる一方、試合が中断して流れが止まる「副作用」もあると佐藤さんは考える。

 最新技術がプレーの判定に生かされる時代になっても「技術をどう使うかは結局、人間次第。試合後に選手から『お疲れさま』と言葉を掛けてもらえるような、良い試合を目指したい」と意気込む。

 十五日の試合では、栃木県矢板市の相楽亨(さがらとおる)さん(41)が予備の副審を担当する見込み。日本からは副審として、他に山内宏志さん(39)も選出されている。

 <ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)> 得点やPK、一発退場などの局面に限り、映像で確認して主審の判定を手助けする審判員。別室で作業に当たる。判定を下す権限はなく、主審が伝達された内容を踏まえて最終判定を決める。誤審防止が期待されるが、確認に時間がかかりすぎるとの批判もある。

中日新聞 東京新聞

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