6月9日

ロシアW杯、日本代表の可能性は ベルギー1部日本人経営者が語る

ベルギー1部・シントトロイデンの立石敬之CEO=ベルギー・シントトロイデンのスタジアムで(占部哲也撮影)

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 サッカー先進国が集まる欧州の地で、クラブチーム経営のトップとして奮闘する日本人がいる。ベルギー1部・シントトロイデンの立石敬之・最高経営責任者(CEO)(48)だ。最先端の現場に身を置き、経営者の視点で観察する日本代表の、W杯での可能性とは−。また、小国ながら優秀な若手を次々と輩出するベルギーのシステム、自身の今後の展望についても聞いた。 (占部哲也)

 立石さんはベルギー1部・シントトロイデンのCEOに1月29日に就任し、今夏、初のシーズンを終えた。FC東京、大分で強化部トップも経験している立石CEOは、西野体制で臨む日本代表について口を開いた。

 「身体的なところで言えば日本は勝てない。特に体の厚みが違う。日本は技術的に優れているというけど、トップスピードでの『止めて、蹴る』という技術は欧州の方が高いし、しっかりしている」

 経営者の観点からの分析も付け加えた。

 「ビジネスの観点からも1対1が重視される。1人で止める、1人で抜ききる。移籍市場で注目されるのは1対1に強い選手。だから、チームを一つにまとめるには時間がかかる。そのため、欧州では代表でもクラブでも尻上がりに良くなるチームが優勝する傾向にある」

 デュエル(1対1)を経営者も、指導者も重視する。「気の利いたポジショニング、カバーリングは日本では評価されるけど、こちらではされない」。日本と欧州の違い。逆に、そこに付け入る隙、可能性があるという。

 「日本代表はコンディショニングと結束力が強みになる。まとまる力がある。いかに良いスタートダッシュを切れるか。そこに懸かってくる。相手国がチームとして固まる前にどれだけやれるか。戦術的にまとまって、メンタル的にもまとまる。その条件を整えれば、今の日本なら1次リーグ突破の可能性はある」

 W杯初戦・コロンビアがチームとして完成する前にたたく。先手必勝を成し遂げるために、コンディションをトップに保ち、「相手より多く走ること」。そして、「日本人は頭でっかちになるけど、サッカーは欧州も日本もそんなに変わらない」とも強調した。

   ◇  ◇

 エデン・アザール、ルカク、デブルイネ…。小国のベルギーからタレントが次々に輩出されている。なぜか。CEOになって半年足らずだが、“国策”に驚いたという。

 「育成はサッカー界だけじゃなく、国も担っている。23歳以下の選手の給料と移籍金の総額がある一定の割合を超えると税金の還付金がある。国として税制優遇をしている。例えば45%の税金が、還付金があることで実質20%の税金しか払わなくていいことになる。おのずとクラブは23歳以下の選手を獲得し、使う仕組みになる」

 若手に投資するシステムが出来上がっているという。そして、日本人経営者として目指すところは「最終的にはアジア人にとって人気のあるクラブにしたい。中国、韓国、日本、タイすべて。中田英寿がイタリアに来た時、みんな『ペルージャ知っている』ってなったように。人気チームにしたい」と語る。

 「日本人は東京五輪の世代を中心に取りたい。日本企業(DMM)がオーナーなので日本とのつながりは当然ある。やっぱり、意識せざるをえない。あとは、ビジネスモデルを作って日本に返す。地方クラブの特殊性を生かし、どうやってビジネスを広げるかっていうのは提供できると思う」

 チケットやグッズの購入、駐車場の予約までスマートフォン1つで行える公式アプリを開発。スタジアムで使える地域通貨にも取り組んでいる。スタジアム内にホテルが併設され、スーパーも完備。Jクラブの下部組織のキャンプ地として使いたいという問い合わせもあり、欧州での日本の基地になる可能性もある。今後、ベルギーの地方都市シントトロイデンの改革が、日本サッカー変革の一端を担うかもしれない。 (占部哲也)

中スポ 東京中日スポーツ

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