5月24日

本紙評論家・戸田さんが提言 日本は1次リーグH組でこう戦え

サッカーW杯について語る元日本代表の戸田和幸さん=横浜市で

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 6月14日に開幕するワールドカップ(W杯)で日本は勝てるのか。大会に本紙で評論を務める2002年W杯日本代表の戸田和幸さん(40)が、1次リーグで対戦するコロンビア、セネガル、ポーランドの戦力を分析し、日本が付け入るスキを探る。(構成・木本邦彦)

◆<第1戦>6・19コロンビア 初戦は100%の力注ぎ込め

 「日本は、負ける可能性が高いという前提で、いろんな準備をしなければいけない。少しでも有利に進められる方法を用意できれば、能力の差をある程度は埋められる」

 テレビの解説などで、イングランド、スペイン、ドイツなど欧州各国のリーグに精通する戸田さんは、厳しい戦いを予想した上で、初戦のコロンビア戦に「100%のエネルギーを注ぎ込むべきだ」と言う。

 「ここで勝てないと、1次リーグ突破は相当厳しい。ただ、ハイリスクで攻めるという意味ではない。前回の対戦(ブラジルW杯で1−4と大敗)が分かりやすい。日本が攻めに出て、多くのスペースができ、能力の差が出てしまった。今回のコロンビアはさらに強い。FWファルカオ(モナコ)は前回故障で欠場したが今もワールドクラス。トップ下のロドリゲス(バイエルンミュンヘン)も元気だし、センターバック(CB)のデビンソン・サンチェス(トットナム)は190センチ近い高さがあり、強くて速い。中心軸が非常にしっかりしている」

 コロンビアの強みを理解した上で、どんな試合運びが効果的なのか

 「ハリル(前監督)さんは、マンマークをベースにしていたが、このレベルでは通用しない。1対1でほぼ負けるから。そこで局面を打開されたらバランスが大きく崩れてしまう。スペースを管理しながら、味方同士で距離を縮めて常に数的優位の局面をつくりたい。(同組の)3チームに穴なんかない。強いて挙げれば、こっちよりあっちかなという程度。右MFのクアドラード(ユベントス)は恐ろしく速くて、激しいアップダウンもできるしサイドバック並みの走力がある。ユベントスではレギュラー格。故障から戻ってきたばかりだが休んでいた分、エネルギーが十分とも言える。止めるのは難しいが、カウンターのスピードは右しかない。狙うなら左サイド。コロンビアは決してバランスを崩さず、少ない人数で点が取れる。バランスを崩してでもという場面は、左DFファブラ(ボカ・ジュニアーズ)が前に出ることが若干ある」

コロンビア代表のクアドラード(ゲッティ・共同)

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◆<第2戦>6・24セネガル マネに長友を張り付かせ5バック

 身体能力の高いセネガル戦にはポイントを2つ挙げた。

 「マネ(リバプール)は、たぶん3トップの右サイド。前を向かせたら止められない。1・3倍速だから。世界のトップが集まるプレミアリーグで、そう見えるのだから、とんでもなく速い。日本は5バックで対応する手もある。長友を張り付かせて、ボールが入っても前を向かせない。あとは4人で守る。マンマークはこうやって局地的に使えば効果が出る。2人のセンターバックの間に長谷部を置いてもいい」

 セネガルには守備陣にもスーパーな選手がいる。

 「クリバリ(ナポリ)は今大会に出場するCBで間違いなく5本の指に入る。戦術理解度、ビルドアップ(攻撃の組み立て)能力が非常に優れたモンスター。先日、テレビ解説の準備で、ナポリ対ユベントスを3試合見た。ユベントスは、必ずFWイグアイン(アルゼンチン)がクリバリについて、自由にさせなかった。相手が嫌なところにパスを出せるクリバリにはボールを持たせない。それも方法論の一つになる。アフリカ予選を見た時は、ピッチが荒れていたせいか、大味なサッカーをする印象だったが、欧州でのボスニア・ヘルツェゴビナ戦では、組織を感じた。3ラインがコンパクトで、ボールを奪うのも、守備に戻るのも早い。その試合は3バックを試していたが、基本は4バック。日本は、相手が3−4−3布陣なら、どうやって守るか、4−3−3なら、どのスペースを使うか、詳細な対策が求められる。セネガルの身体能力を出さないように『あれ、日本は何やってるんだ』と思わせるような展開にしたい」

リバプールでプレーするセネガル代表のマネ(右)=マンチェスターで(AP・共同)

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◆<第3戦>6・28ポーランド レバンドフスキ&ミリク 最強ホットライン絶つ

 最後に当たるポーランドは、脅威の前線を誇る。

 「レバンドフスキ(バイエルンミュンヘン)は、この惑星でトップ3のストライカー。右足でも左足でも頭でも点が取れて、点を取らせるプレーも抜群。ミスターパーフェクトと言っていい。ミリク(ナポリ)もワントップができる。この2人が縦に並ぶと、日本はアウトかもしれない。レバンドフスキが中盤に下りてくると、ミリクが前線のスペースに飛び出す。難解な戦術を用いるナポリで鍛えられているから、手ごわい。全体的には、流れるようにパスを回す時間帯は多くないが、我慢強い試合運びができる。心のよりどころが前線にいるから、簡単には折れない。欧州予選で唯一敗れたデンマーク戦(0−4)を見た。2人のCBは前に強いが、サイドをカバーする動きはあまりない。デンマークは敵陣奥深くの両サイドのスペースに攻撃の起点をつくって攻めていた。これがヒントになるかもしれない。前回と比べると、今回は3チームとも、前線に世界で本当に一握りの選手がいる。個に依存するというより、その特長を生かす戦いができるチーム。日本の準備期間は短いが、知識や方法論があれば何とかできる。寝ずに考えればいいんだから」

ポーランド代表のミリク(ゲッティ・共同)

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<戸田和幸(とだ・かずゆき)> 1977(昭和52)年12月30日、東京都町田市生まれの40歳。桐蔭学園高から96年、清水入り。2003年からトットナム(イングランド)などでプレーし13年限りで引退。日本代表では02年日韓W杯で全4試合に出場し初の16強入りに貢献するなど通算20試合1得点。J1通算271試合4得点。主にMF、DF。

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