5月9日

<祭典の鼓動>怠るな50センチの寄せ 対南米初勝利へ先人・井原からの助言

98年のアルゼンチン戦について語る元日本代表の井原さん

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 ワールドカップ(W杯)ロシア大会が6月14日に開幕し、6大会連続出場の日本は19日に1次リーグ初戦でコロンビアと対戦する。日本は過去のW杯で南米勢に1分け3敗と勝ちがなく、コロンビアには前回大会で1−4と大敗した。なぜ日本は南米に勝てないのか。日本が初出場した1998年大会で主将としてアルゼンチンと戦った井原正巳(50)=福岡監督=と、2006、10年大会に出場した駒野友一(36)=福岡=に聞いた。 (文中敬称略)

 「アルゼンチンはしたたかで、サッカーをさせてもらえなかった」。日本が初めてW杯の舞台に立った1998年大会初戦。優勝候補を相手に0−1と善戦したが、日本代表主将だった井原は完敗と受け止めている。

 相手はフィオレンティーナ(イタリア)で活躍していたバティストゥータを筆頭に、欧州や南米の強豪リーグに所属する選手たち。全員Jリーガーで臨んだ日本との地力の差もさることながら、一瞬の隙を逃さない抜け目なさに「向こうは勝つための肝を知っていた」と脱帽した。

 象徴的なのが前半28分の失点シーンだ。自陣ペナルティーエリア付近に上がってきたオルテガにパスが来た。井原はバティストゥータへのマークを解いてチェックしようとしたが、オルテガはスルー。ボールは後ろにいた名波浩の足に当たり、ノーマークだったバティストゥータに渡って決められた。

 「僕が前へチャレンジしにいった瞬間、空いたスペースにバティは入ってきた。たまたまボールがこぼれてきたけど、ああいう状況でGKの動きを見て確実に決める冷静さは、さすがだった」

 あれから20年。日本は同じく強豪の欧州勢には2勝3分け3敗だが、南米勢には勝てていない。井原は想像の域と断りつつも持論を展開した。「組織で戦うヨーロッパ勢に対して日本の組織が上回ることはある。ただ、南米は個で戦う。個の能力に日本の組織力が上回られている。守りであと50センチ寄せるのを怠ったら決められる。どこまで突き詰められるか」

 日本は本大会2カ月前に、ハリルホジッチ監督を電撃解任した。世界中に衝撃を与えたが、井原は「よほどうまくいっていなかったから判断したはず。選手は代表に選ばれたいと思って、集中してアピールするしかない」と理解を示す。

 井原自身も97年のW杯アジア最終予選中に主将として加茂周監督の電撃解任に直面。後任監督の岡田武史とともにW杯初出場を果たし「ジョホールバルの歓喜」として称賛された。「今回の決断が良かったかと言われるには、結果を出すしかない。今回のインパクトは21年前以上だけど、結果を出してほしい」。かつて逆境をはね返した「アジアの壁」は、再び歓喜が訪れる瞬間を待ち望んでいる。(末継智章)

W杯南アフリカ大会決勝トーナメント1回戦・パラグアイ戦、PK戦でクロスバーの上に当て外す駒野(3)(共同)

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◆駒野、引いて守るな

 駒野がW杯で南米勢と戦ったのは、2010年の決勝トーナメント1回戦のパラグアイ戦。PK戦で外した場面が印象的で、駒野も「結果を求めて日々練習するためにも忘れてはいけない場面」と強く胸に刻んでいる。

 0−0で終えた120分間の戦いは「チームとしての守備はうまくできた」と評価する一方で「ボールを回させてくれるけど、ペナルティーエリアの中では簡単に仕事をさせてくれなかった」と相手の堅い守りに脱帽した。

 シュート数は日本が12本、パラグアイは13本。だが守備でGKと1対1になるピンチに陥り、攻撃面では決定機をつくれなかった。「ボールへのアプローチが速く、シュートコースを限定された。相手の方がサッカーを知っていた」と質の違いを痛感した。

 06年W杯のブラジル戦は出場機会がなかったが、日本先制後、目の色を変えた“王者”に圧倒された。「スイッチが入るように、プレーの精度が明らかに変わった。南米のチームは急にスイッチが入る。その変化も対応しづらい」

 南米対策には主導権を握ることが必要だという。「情報が少ない初戦は引いて堅く守りがちだけど、引いてしまうと何もできずに体力を消耗する。全員で同じイメージを描き、前線からプレッシャーをかけたり、前線にくさびのパスを入れたりしてスイッチを入れてほしい」。今も日本代表復帰を狙うベテランは「(監督交代で)チャンスが来ましたよ」と得意のクロスとFKを磨いている。

中スポ 東京中日スポーツ

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