トップ > 北陸中日新聞から > 能登半島地震特集 > 記事一覧 > 4月の記事一覧 > 記事

ここから本文

能登半島地震特集

フゲンザクラ“復興の花” 倒れても 咲き誇る命

倒れてもつぼみをつけ、花を咲かせ始めた=石川県志賀町の旧稗造小で

写真

 能登半島地震で被災した石川県志賀町(旧富来町)鵜野屋で、根元から倒れた八重咲きのサクラが例年通り、花を咲かせ始めた。サクラの木があるのは、避難所生活を送る住民たちの目の前。倒れてもなお花をつける生命力の強さに、住民は復興への思いを重ね、勇気づけられている。 

志賀の避難所前 被災住民『励みに』

 このサクラは志賀町の旧稗造小学校の前庭にあるフゲンザクラ。昭和の初めからあると伝えられやがて百年近く生きる。多くの卒業生を見送り、同校が二〇〇三年三月に閉校した後も毎年、花を咲かせる大型連休前後に、地区の人が集まり花見をして親しんできた。

 地震により、根元をさらして倒れ、校舎跡地に建てられた研修センターは避難所となった。

 フゲンザクラは強かった。一部分だけ残った根っこを命の源とするように、肌寒い時期からつぼみをつけ、ついに二十七日、花が開いた。避難所で寝泊まりする上田とめ子さん(67)は「すごいね。生きてるんやね」と慈しむように花を見つめ、松田和子さん(60)は「サクラに励まされている。うれしいわいね」と笑顔を見せた。

 避難所では今も十一人が生活を送り、避難所の隣の運動場で建設が進む仮設住宅に移ることを心待ちにしている。

 断水の時は思うに任せなかった洗濯だったが、今では集落に洗濯物もはためくようになった。

 フゲンザクラは三、四日好天が続けば満開となりそう。五月一日には仮設住宅への引っ越しを予定しており「ちょうどそのころに満開になるかな」と松田さんは楽しみにしている。

  (小塚泉)

 

この記事を印刷する

北陸中日新聞から
石川
富山