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能登半島地震特集あの日から2年−3・25能登半島地震(4)
取り戻しただんらん『子のため』わが家再建真新しいフローリングにコーヒーテーブルとテレビを置いた居間で、男児二人がペットボトルのおもちゃを手に駆け回る。思わず落として床を傷つけそうになる。電気工事士小島秀樹さん(45)は、二人のやんちゃぶりを「おとなしく座っていなさい」としかる。もちろん、本気で怒っているのではない。 長男佑樹君(8つ)と次男聖也君(6つ)。小島さんはわが家を満喫する二人に目を細める。二人の無邪気なにぎやかさに、うれしさを感じている。 小島さんの家は能登半島地震で最も大きな被害を受けた石川県輪島市門前町道下(とうげ)にある。前の家は地震で倒壊し一家四人は仮設住宅に入居した。 自宅の再建計画や費用の工面で走り回った。「あまり先のことは考えないようにした。そうしないと、建て直せなかった」。男児二人は仮設住宅で少しおとなしくなっていた。「二人を自宅に戻したい」という思いが無理をさせた。 貯金を取り崩し、「一生かかって払う」ほどのローンを組んだ。被災から九カ月後の二〇〇七年末、待ち望んだ自宅が完成した。台所など一部は前の家を修繕して使い、残りは新築した。 再建した家で、子どもたちは次第に元気になり始めた。地震前の生活が戻ってきた。 夏には近くの磯へ、二年ぶりの海水浴に出掛けた。震災前までしていたように、岩の間をのぞき込んだり、海藻の下をさらいながら、貝やカニ、タコなどを探し、親子で一日中遊び回った。 「お父さん、また行こう」。翌週末から催促の嵐が始まった。海が荒れた日も寒い日もお構いなしだった。 小島さん自身も釣りを再開した。妻の政美さん(39)は地震前まで続けていたガーデニングを始め、敷地の植木鉢は三十を超えた。 聖也君は四月から小学校に進学、佑樹君は三年生に進級する。小島さんは「家族みんなに心のゆとりができた。以前は当たり前だと思っていた自宅の良さを感じています」と幸せをかみしめる。 (能登・上野実輝彦)
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