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能登半島地震特集『夫婦松』は残った! 穴水の全壊旅館跡地 地震被災者の励みに
能登半島地震の被害が大きかった石川県穴水町大町で、解体した老舗旅館の跡地に、二本の松の木が残っている。震災前と変わらず、寄り添うように立つ松の木の姿を、被災者は「夫婦松」と呼び、励みにしている。 夫婦松は、高さ約六メートルと七メートル。一九四八年創業の宮森旅館のシンボルだったが、旅館は地震で全壊した。辺りの被災家屋も次々に解体され、さら地になっているため、現在はひときわ目を引く。 三代目館主の宮森つね子さん(59)によると、夫婦松は旅館業を始める前からあった。当初は五本あったが、夫婦松以外は枯れてしまった。旅館は町内会の新年会や秋祭りの後の集まりなどで利用されてきた。住民たちが「松はおれらが幼いころからあったねえ」と懐かしそうに眺めるため、宮森さんは「旅館はたたみます。でもいっぺんに何もかもなくなるのは寂しい」と、夫婦松を含む庭を残すことにした。 宮森さんは現在、町内の友人宅で暮らしているが、五月から仮設住宅に移る。「もう旅館はないけど、思い出は残っている。小さいころはよくあの松に登って、母親にしかられました」としみじみと話していた。 (穴水通信部・島崎勝弘)
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