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能登半島地震特集

不安ためないで聞かせて 精神対話士が巡回 門前

1軒1軒を訪ね住民の悩みを聞く坂尻さん(中央)と大野さん=輪島市門前町の猿橋地区で

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 能登半島地震で被災した輪島市門前町に二十日、対話を通じて心のケアに取り組む「精神対話士」のボランティアが入り、依然として不安を抱える被災者の支援を始めた。

 現地入りしたのは、精神対話士の坂尻他津子さん(58)=金沢市=と大野照夫さん(59)=横浜市。二人は同町猿橋地区の一戸ずつを訪ね、住民の声に耳を傾けた。

 狭い路地裏の一軒家。地震で崩れた庭に立つ木を切る作業を男性(78)が見守っていた。坂尻さんらが近づき「立派な木ですね。樹齢何年ですか」と尋ねた。会話の中で男性にがん闘病中の妻(72)がいることが分かった。

 坂尻さんらは男性に断って自宅に向かい「具合はいかがですか」。玄関先で体調を尋ねられた妻は、闘病の苦しみを語り出した。「じいちゃんや子どもに世話ばかりかけて申し訳ない」「地震で死んだ方が楽だった」

 話題は家族への思い、好きな花、抗がん剤への不満など多岐にわたり、一時間後に妻は「せっかくもろうた命。ちょっこりがんばってみようかな」と前向きになった。

 坂尻さんは「医療職と違って治療は目指さない。ため込んだ不安を出して和んでもらえれば」と話した。二人は二十一日も引き続き被災地を回る。 (伊藤弘喜)

 

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