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能登半島地震特集

自宅全壊 避難所から海へ 門前・鹿磯港 再建誓い漁師たち準備

自宅は全壊したが「再建まで頑張る」と、網の手入れをする松本さん(手前)=石川県輪島市門前町の鹿磯港で

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 石川県輪島市沖では間もなく定置網漁のシーズンを迎える。同市門前町の鹿磯港では、能登半島地震でできた水揚げ場のひび割れを横目に、漁業者たちが今月末の網入れに向け、出漁の準備を進めている。自宅が全壊し、避難所生活を続ける漁師たちも「家を再建するまで頑張らんと」と、作業を急いでいる。

 「網を触っとったら気が紛れる」。輪島市門前町剱地の漁船乗組員松本清造さん(67)は網の破れ目を繕いながら、久しぶりの漁に向け、気持ちをたかぶらせる。

 地震で自宅は全壊。妻と息子を連れて避難所に入った。解体は順番待ちで、自宅は今にも崩れ落ちそうなまま。「自分で建てた家やから、建っとる間はどうしても気になる。いっそのこと、一気に倒れていた方が良かったかも」。日焼けした顔に、やるせなさをにじませた。

 それでも「いつまでも沈んでいても仕方ない」と、地震の二週間後から定置網漁の準備作業に復帰した。破れた網の修繕や沖に残してある網の掃除をし、四月末から十月まで行われる漁の準備を進めている。

 不安もある。港湾施設の被害だけでなく、地震で海底は隆起し、魚の通る道が変わっている可能性がある。港の復旧工事は急ピッチで進められているが、松本さんは「影響は網を入れてみんと分からんね」と話す。

 商船に乗り、海外や国内各地へ行った経験もある。それでも「門前が一番。小さな家でもいい、何とかして建て直すまで頑張るわ」。不安を振り払い、人生の荒波に立ち向かう覚悟だ。

 (報道部・高橋雅人)

 

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