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能登半島地震特集

能登地震 思い刻む 復旧作業、被災者の声 後世に

資料館に残そうと、被災した町を撮影する木原さん=石川県輪島市門前町道下で

写真

輪島の住民 資料館めざす

 能登半島地震の記憶を後世に伝えようと、石川県輪島市門前町の郷土史研究会メンバーが倒壊家屋や復旧作業の様子をビデオで撮影し、記録を収集している。今は生活の立て直しが最優先だが、いずれは「能登半島地震災害資料館」として形に残したいという。佃和雄会長(79)は「震災に負けず立ち上がる住民の強い意志を表す取り組みになれば」と話す。(富山支局・北山真由子)

 三月二十五日の発生当時、佃会長は門前町道下の自宅書斎にいた。突然「ガスーン」という音とともに家が傾き、本があちこちから飛んできた。経験したことのない大地震。親類宅へ避難する途中、近所の宝泉寺の住職で研究会メンバーの木原正信さん(70)が檀家(だんか)を見回っているのに出会い、町の様子を記録しておこうと話し合った。

 木原さんは数日後から、門前地区を歩いて家屋の取り壊しや修復作業などをビデオに収めている。「外に出たら、向かいの家が一回浮いたように見えた。それが落ちて、ばらばらに崩れた」。傾いた家を片付ける老夫婦の生々しい証言も聞き、できる範囲で記録を集める毎日だ。

 「いつになるか分からないが、資料館を作りたい」。佃会長は構想を温めている。映像や写真のほか、地震実験室なども備えたいという。壊れた生活用品なども展示したいが、どんどん捨てられている。「こんな時に捨てるなとも言えない。とりあえず、自宅の蔵の壊れた物をとっておくつもり」と佃会長。同じ被災者だけに、目の前のことで必死な住民たちの状況は痛いほど分かる。

 それだけに「みんな、まさか能登でという気持ちだろう。日本はいつどこで大地震があってもおかしくない。教訓として記録を残したい」との思いは強い。メンバー約三十人の生活が落ち着いたら、資料館構想を話し合うつもりだ。

 

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