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能登半島地震特集一時帰宅 片付けに汗 輪島・門前深見地区 室内は散乱…涙も
能登半島地震で道路が寸断され、孤立していた石川県輪島市門前町の深見地区で八日、林道の迂回(うかい)路を利用した一時帰宅が許可され、住民約六十人が二週間ぶりの自宅で片付けなどに汗を流した。 海沿いの山間部に位置する同地区は、主要道が土砂崩れや陥没で不通となった。北側から入る林道の補修が七日に完了したため、八日からは市が発行する通行許可証を持つ住民に限り、午前十時から午後四時まで一時帰宅が許可された。 住民たちは同日午前、乗用車やトラックに分乗し、避難先の阿岸公民館からわが家へと向かった。それぞれ冷蔵庫に残した食料品の処理や、部屋の清掃などに追われた。 地震後初めて自宅に入った藤原透さん(65)は「不安はあったが、帰る場所はやっぱりここしかないと思った」と話した。しかし、木造二階建ては倒壊こそ免れたが、納屋や塀は崩れ、室内は家具や食器が散乱。「夢ならいいのに。でもこれが現実なんだ」と涙ぐんだ。 久しぶりに自宅に足を踏み入れた山本和子さん(70)は「やっぱりうちはいいね。ぞうきん十枚使って部屋をふいて、ふとんを干した。あっという間の一日でした」と笑顔。板谷弘区長(72)は「妻の遺影に手を合わせてきた。みんなも帰宅できて安心したと思う」と、ほっとした表情を見せた。 県奥能登土木総合事務所から依頼を受けた民間地質調査業者も同日、現地入りし、斜面の亀裂の変動を感知するとサイレンが鳴る計測器三基を設置した。 (高岡支局・高瀬俊也、報道部・伊藤弘喜)
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