政治に揺れ、メダルに救われた 平昌五輪閉幕

2018年2月25日

 開会式での南北合同入場行進に手を振る韓国の文在寅大統領夫妻(前列)と、北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長(後列左)と金与正氏(同右)=9日(聯合=共同)

 開会式での南北合同入場行進に手を振る韓国の文在寅大統領夫妻(前列)と、北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長(後列左)と金与正氏(同右)=9日(聯合=共同)

 平昌冬季五輪が閉幕―。競技場の中でも、外でも、これほど話題の多かった冬季大会は珍しい。日本勢が史上最多のメダルを獲得。最高レベルの競技は感動的なドラマを数多く生んだ。一方、大会には朝鮮半島をめぐる政治情勢が色濃く反映した。ドーピング一掃の課題も道半ばだ。近未来の五輪のあり方を考えながら、2020年東京五輪を迎えたい。

 ▽「南北融和」の結末は?

 韓国と北朝鮮による「南北融和」の演出が、「これでもか」と言うほど繰り返された。

 最終日の人気イベントであるフィギュアスケートのエキシビション。メダリストら上位と地元の選手らによる華やかな舞台に、北朝鮮ペアが登場した。2人は本番の競技では13位。通常ならこのショーへの出番はないはずだ。北朝鮮選手は“準地元”ということか。

 開幕直前に北朝鮮の電撃参加が決まり、アイスホッケーの南北合同チーム結成など次々と特例が認められた。

 開会式の南北合同行進。セレモニーに招待された北朝鮮の高官たち。競技場内外で「五輪外交」が展開された。

 北朝鮮の核・ミサイル問題に解決の糸口は見つからない。北朝鮮の対外宣伝工作に乗せられただけなのか。韓国は五輪を無事に成功させるだけの目的で、譲歩を重ねたのか。国際オリンピック委員会(IOC)もその手助けをした。批判も多い。

 五輪への政治介入、政治利用に見えた一連の出来事が、「五輪が朝鮮半島の平和に貢献した」と評価される時は来るのだろうか。

 ▽日本、最多メダルの躍進

 日本は予想を上回るメダルラッシュだった。金4、銀5、銅4でメダル総数は13。1998年長野大会の10個を上回り、冬季五輪史上最多を記録した。

 フィギュアスケート男子で66年ぶりの五輪連覇を果たした羽生結弦の偉業が特筆される。4回転ジャンプ全盛のフィギュア男子の世界をリードし続ける技の成長ぶりと、右足首故障を耐えた強靭(きょうじん)な精神力。「ゆづ君」と親しまれるキャラクターも相まって、氷上の芸術と言われるスポーツの裾野を大きく広げた。

 小平奈緒の500メートル優勝などで金3、銀2、銅1のメダル6個を積み上げたスピードスケート女子の大活躍も高く評価したい。

 団体追い抜きの金メダルが、躍進を象徴した。スピードは前回ソチ五輪でメダルゼロ。その反省から整備されたナショナルチーム(NT)体制が成果を挙げた。

 NTでは所属チームの垣根を越えて、年間300日にも及ぶ長期合宿を行い、先進のスポーツ科学も取り入れた。こうした環境で鍛え上げられた見事な隊列、戦術が団体追い抜きの決勝で生きた。個の力に勝る強豪オランダ相手に、組織力で快勝した。

 日本の競技スポーツを支えてきた企業スポーツは衰退している。かつてのスポーツ界の構造から脱却した試みが、各競技で模索されている。スピード女子も成功例の一つだろう。

 ▽「クリーン五輪」持ち越し

 ドーピングとの決別に向け一歩を踏み出した大会は「クリーン五輪」とはならなかった。ドーピング違反がやはり摘発され、問題の根深さを浮き彫りにした。

 これまで反ドーピングに関しては「優等生」と言われてきた日本も渦中にある。スケート・ショートトラック代表の1人が現地での検査で陽性反応を示し、暫定で資格停止となった。違反が確定すれば、冬季五輪の日本選手では初のケースとなる。

 組織的なドーピングにより、ロシアは選手団としての参加を禁じられた。ロシア勢は潔白とされた選手のみが個人資格で出場したが、その中からも複数の違反選手が出た。薬物に依存する体質を断ち切れていないのだろうか。

 IOCはロシア勢の「クリーン度」を見て、改善されていればロシア・オリンピック委員会の資格停止処分を解除し、閉会式ではロシア国旗の使用も認める意向だった。しかし資格回復は先送りされた。

 ロシアは前回ソチ五輪では、大会終了時に最多の金メダルを獲得した。平昌では違反歴や疑惑のある選手などが排除されたこともあってか、ロシア勢の金メダルは2個と激減した。

 クリーン五輪の目標は、20年東京五輪に持ち越された。(共同通信=荻田則夫)

(共同)

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