7月17日

<Scouting ラモス瑠偉>世界一フランス 王者のサッカー ラモスさん大会総括

W杯ロシア大会でクロアチアを破って2度目の世界一に輝き、喜びを爆発させるポグバ(左端)らフランスイレブン=モスクワで(共同)

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 モスクワ・ルジニキ競技場に7万8011人を集めて行われた決勝は、フランスがクロアチアに4−2で勝ち、自国開催だった1998年大会以来20年ぶり2度目の世界一に輝いた。ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の導入、2大会ぶりに16強入りした日本の奮闘などが話題になった大会を、日本代表OBで本紙評論家のラモス瑠偉さん(61)が総括した。

◆4強の共通点は速攻

 組織に加えて非常にレベルの高い個の集団。強い。今後、数年はフランスを中心に世界のサッカーが動いていくことは間違いない。まさに世界最先端のサッカーだ。

 決勝のクロアチア戦、勝負を決めたフランスの3点目は、今大会を象徴するゴールだった。中盤でボールを奪ったポグバが、前線のエムバペに鋭いロングパスを通す。一気の速攻で右サイドを切り裂くと、猛然と駆け上がってきたポグバがシュート。その跳ね返りを再びポグバがたたき込んだ。

 フランスには若い選手が多いが、積み上げてきた経験はとてつもなく大きい。自国開催だったユーロ(欧州選手権)2016の決勝で、ポルトガルに敗れた悔しさが、選手を大きく成長させていたのだろう。4人のDF、3人のMFできっちりと構成されたブロックにはスキがなく、強固。そして強烈な個性と技術を持った前線の3人。控えを含めた結束力。組織としての機能的な美しさと強さはまさに王者のサッカーだった。

 今大会、4強に残った国の共通点は、強烈な速攻だ。きっちりとブロックを作り、組織的にボールを奪うと、そこから手数をかけずにカウンターを仕掛ける。3位のベルギーも素晴らしいカウンター攻撃をもっていた。日本戦の決勝ゴール、さらに3位決定戦でみせた速攻。アザールの圧倒的なドリブルを軸にブラジルをも圧倒した。縦に速い攻撃はいまや完全に世界のトレンドとなり、強烈な速攻を持っているチームが生き残った。

◆足止まったクロアチア

 個人的に応援していたクロアチアは、やはりハンディが大きすぎた。1試合分、多くの時間を戦い、決勝までの試合間隔も1日短かった。この差はでかい。実際、後半になると足が止まり、無駄な横パスが極端に増えた。前線の選手が動けなくなり、武器だった縦に速い攻撃が影を潜めた。

◆フェアプレーを武器に

 今大会、16強に終わった日本はどうだったのか。私はこれまでの日本代表の中で最も未来ある戦いを見せてくれたと思っている。日本の縦に速い攻撃は、世界に通用することを示した。コロンビア戦の先制PKを生み出した速攻。セネガル戦の乾、ベルギー戦の原口のゴール。運動量を生かした素晴らしい速攻を見せてくれた。

 また、日本のフェアなプレーは、これから世界と戦っていく上で大きな武器になる。今大会、VARとフェアプレーポイントという新しいルールが導入された。映像技術が進化し、PKが激増。ただ、1次リーグで24回あったPKが、決勝トーナメントでは5回しかなかった。どんなにうまくごまかそうと思っても、反則すればばれてしまう。だから、勝ち残ったチームは、よりフェアなプレーで戦うようになった。

 ポルトガル語でマリーシアという言葉がよく使われる。「ずるがしこい」と「駆け引き」の中間を意味する。ただ、これは決して反則や、汚いプレーをしてでも相手を止めろという意味ではない。

 日本サッカー界は長い年月をかけ、フェアプレーを訴えてきた。反則して止めるのは、ある意味楽だ。しかし、そんなプレーを繰り返している選手は、絶対にうまくならない。どうやって正しいプレーで相手を止めるか。ファウルでFKを相手に与えれば、失点のリスクも高まる。組織的な守備からの速攻、そしてフェアなプレー。ある意味、日本のサッカーは世界のトレンドを走っていたのだ。

◆欧州や南米でAマッチ

 ただし、ベルギー戦の敗戦を見てもわかるように、まだまだ世界との差は大きい。特に3失点目、ロスタイムのCKを直接相手GKにキャッチされ、そこからカウンターでやられた。判断のスピードと同時性、走力、スピード、そして技術の高さ。力の差は歴然としていた。

 あの強いベルギー相手に2点を先行したことは高く評価される。しかし、その後の試合運びには大きな課題があった。さらに最後のCK。日本にとっては入れば勝利の大チャンスだったが、その裏に潜んでいたピンチにだれも気付かなかった。ゲームマネジメントとリスクマネジメントの重要性を最後の最後に思い知らされた。

 それでも得たものは大きい。ドーハの悲劇があったから、W杯出場があった。ベルギー戦の教訓は、必ず「カタール大会ベスト4進出」に生かされるはずだ。そのためにも今後4年間、日本は欧州や南米でAマッチを行うべきだ。アウェーで戦ってこそ、本当の強さは身に付く。 (ビーチサッカー日本代表監督)

中スポ 東京中日スポーツ

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