7月14日

<カットイン 西川結城>本田の挑戦 次代へ脈々

 本田圭佑が4年後のW杯を目指さないことを明かした。実質、日本代表引退となる。18歳で名古屋グランパスに加入し、世界を意識した言動を繰り返した。当時取材して「頼もしい選手だな」とは思ったが、これほどまで大成するとは想像していなかった。

 「俺はうまい選手やない。ただ下手でも、努力さえすればここまで来ることができる。それをみんなに分かってほしい」。後に言われた言葉が耳に残る。そんな本田の一つの挑戦が終わる。長年、追い続けてきた者として、空虚感がないと言えばうそになる。

 本田が名古屋に加入したころ、選手寮にいたある高校生が、ビリヤード勝負を仕掛けた。「僕が勝てば、何かください!」。結果は高校生に軍配が上がる。本田は悔しそうにしながらも、後日プレゼントを手渡した。その相手こそが、吉田麻也だった。

 今大会前、吉田はこう話していた。「誰がメンバーに選ばれるかは監督が決めること。ただ、あくまで僕個人の意見を言えば、本田さんは絶対にW杯には必要。あの人には一発がある。10代から今まで、どんどんうまくなっていく姿を僕が一番近くで見てきましたから」

 本田の決断とは対照的に、吉田は4年後も目指す覚悟だ。イングランド・プレミアリーグでプレーする29歳は、実は大会前までは決めかねていた。「元韓国代表の朴智星さんは、プレミアと長時間かけてアジアに帰って戦う代表戦を掛け持つことが、心身ともに厳しくなり代表を退いた。その感覚がすごく分かる」。ただ、W杯での刺激的な戦いが、自らの懸念をかき消した。「ここで立ち止まってはいけない」。ロシアをたつ最後にこぼした一言に、未来への決意がこもった。

 同じ名古屋から、日本を背負って立つまでに上り詰めた2人。退く者と引き継ぐ者に、ここで分かれる。戦いは終わり、そして続いていく。 (サッカージャーナリスト)

中日新聞 東京新聞

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