7月13日

<藤田俊哉の目>モドリッチ、逆転劇の中心に

 感動した。派手さはないが味のあるベテランがそろったクロアチア。全員が結束して勝ち抜いた姿には、技術を超えた力強さがあった。

 攻めきれなくても攻めさせない。適度に力を抜く時間帯をつくりながら、勝負どころは逃さず仕留める。巧みな試合運びの中心にいたのはモドリッチだ。スペインの名門レアル・マドリードで10番を背負うMFが、中盤をコントロールして逆転劇へと導いた。

 W杯の2週間前まで激戦の欧州チャンピオンズリーグ(CL)を戦い、短い準備期間ながら本番でも輝いた。172センチで細身の32歳。僕たちと体格がさほど変わらない選手の活躍は、勇気をくれた。バルセロナで主力を張る同じ中盤のラキティッチを含め、やはり世界最高峰のクラブで結果を残す選手は違う。

 ほとんどの選手は今回が最後のW杯となるはず。機は熟していた。ひたすら左サイドで仕掛けてシュートまで持ち込んだ影の功労者、29歳のペリシッチ。ここまで目立たなかった32歳のエース、マンジュキッチ。その2人が得点したことも、チームにとって最高の結果だろう。

 イングランドは、セットプレー以外に決定機をつくれなかった。この日の先発が平均25・7歳という若いチーム。勢いだけでは押し切れない経験の差があった。英国で暮らしている僕には成功を願う気持ちもあったが、今回は明るい未来を感じさせただけでも十分評価したい。

 より高い舞台になるほど、国・地域を背負って戦うW杯のすごみは表れる。決勝は、互いに良さを消し合うシビアな展開になるだろう。

 コンディション面ではフランスが優位。3試合続けて120分戦ったクロアチアは疲れが懸念される上、中3日の日程で休息が1日短い。

 それでも、素晴らしい戦いぶりを目の当たりにして、初優勝への期待も抱かずにはいられない。 (元日本代表MF)

中日新聞 東京新聞

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