7月8日

<蹴球分析 大住良之>磨き抜かれた「判断の速さ」

 ブラジルを倒して準決勝進出を決めたベルギー。今大会で私が最も大きな衝撃を受けたのは、攻撃のスピードだった。5−2で勝った1次リーグのチュニジア戦に、その最高の例を見ることができた。

 ボールを奪うと、ベルギーの選手たちは迷うことなく前線に上がっていく。相手に守備の陣形を整える時間を与えずにシュートまでもっていってしまう。そのスピード感に圧倒された。 

 日本はベルギーに対しうまく戦った。相手の3バックの球出しを巧妙に制限し、スピードアップのきっかけを与えなかったことが最大の要因だ。ベルギーの3得点のうち2点はCKで、3点目は日本のCKからの逆襲だった。ただ、試合を通じてベルギーに唯一スピードある攻撃を許したのが、最後の1点だった。

 ベルギーはE・アザールやルカクといった攻撃陣の個人技やフィジカルの強さで勝負しているわけではない。彼らの速さの根源は、チーム全員の「判断の速さ」にある。パスを受けてから次のプレーを決断するまでに迷いがない。ボールを持っていない選手も、タイミングを逃さずに走る。それがプレースピードを加速させていく。

 日本戦の3点目。自陣からボールを運んだデブルイネは、CK時には近い側のポスト前を守っていたが、GKがボールをつかむかどうかというときには既に日本のゴールに向けて一歩踏み出していた。

 2010年代に入ってからのベルギーの急成長は、育成の成果だという。その育成の重要なポイントが「判断の速さ」に置かれているのは間違いない。 (カザン、サッカージャーナリスト)

中日新聞 東京新聞

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