7月7日

<西野ジャパンの奇跡と軌跡>(終)監督解任2度…検証を怠るな

 振り子の針が左右に大きく振れた4年間だった。アギーレ元監督、ハリルホジッチ(ハリル)前監督、西野監督と3人の指揮官が生まれた。1994〜1998年(ファルカン元監督→加茂元監督→岡田元監督)の例もあるが、W杯決定後の解任劇は初。今大会は前代未聞の大ばくちを打った。

 日本協会は八百長疑惑で解任されたアギーレ元監督に約2億円、「選手とのコミュニケーション問題」でW杯直前でクビになり、3年間率いたハリル監督には6億円を投資。西野監督が前任者の“遺産”を利用しなければ計8億円は水の泡になるところだった。田嶋会長は4月のハリル前監督解任時に「勝つ確率を1、2%でも上げるため」と強調したが、負ければ責任問題は避けられなかった。

 混乱を極め、危険な橋を渡った。同じ轍(てつ)は踏まないため、組織改編も必須だ。西野監督就任時、代表監督をサポートする立場の技術委員長が後任に指名されたことに批判が集中した。現在の技術委員長は(1)代表監督の評価(2)代表監督のサポート−を請け負っているが、(1)と(2)の役割を分離する必要があるだろう。5月の技術委員会でも「評価する人とサポートする人は違う人で」という案が出た。

 また、これまで監督に4年間の期間を与える傾向が強かったが、今後は2年をめどに評価、続投か退任か決めるという。名将の誉れ高いマンチェスター・シティのグアルディオラ監督でさえ、バルセロナを退任時に「私は、もうからっぽになってしまった。4年間は永遠に近いものだ」との言葉を残している。ザッケローニ元監督時代は4年目に失速、ハリル前監督は3年目で崩壊している。ある協会幹部は「最初から4年間を前提にしてはいけない」とも話す。

 選手目線ではどうか。主将として3大会を経験した長谷部は帰国会見でこう語った。「これだけ長い間、日本代表でプレーさせてもらい、日本が最終的に目指すサッカーを確信できていない部分がある」。まだ見えぬジャパンウエー。幸運にも細い糸がつながったこの4年間だったが、失敗から目をそらし、検証を怠れば大きなしっぺ返しが待っているだろう。 (占部哲也)

 =おわり=

中スポ 東京中日スポーツ

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