7月7日

<光と影 西野Jの挑戦>(下)新世代台頭、大きな宿題

試合に出ることなく大会を終えた大島(中)=2日、ロストフナドヌーで(岩本旭人撮影)

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 ベルギーとの激闘を終えた翌日、ベースキャンプ地のカザンに戻った最後の取材対応で、25歳の大島が悔しさを押し殺したような表情で大会を振り返った。「得たものはないというくらい、ピッチに立った人とそうでない人の感じる差は大きい」

 実績重視で選ばれたメンバー23人の大会開幕時の平均年齢は過去最高の28・3歳。「おっさんジャパン」とも言われたチームは、ベテランが意地を見せ、2大会ぶりの16強入りという結果で批判をはね返した。その陰で、大島ら若手は出場機会を失った。

 自らを「おっさん」と呼ぶ長友ら30代の存在感は際立った。2010年南アフリカ大会から3大会連続で日本代表をけん引してきた長谷部、長友、川島の3人は主力を担い、本田、岡崎も後半からの起用で役割を果たした。

 14年ブラジル大会を経験した大迫、香川をはじめ20代後半の中堅も中心選手として活躍。27歳の原口は「先輩の強さや精神面の良さがたくさん見えた。彼らを超えないと8強は見えてこない」。バトンは次世代へ順調に受け渡されているようにも映る。

 しかし、最も若い16年リオデジャネイロ五輪世代の大島、遠藤、植田、中村の4人は出場時間ゼロ。経験不足があったとはいえ、過去のW杯5大会では1998年フランス大会の中田、南ア大会の本田ら直近の五輪に出場した若手がチームに刺激に与え、その後、代表を支える存在になった。直近の五輪メンバーが1人もW杯の試合に出場しなかったのは初めてのことだ。

 かつてアルゼンチン代表でメッシやテベスら若手を積極起用し、今大会でコロンビアを率いたペケルマン監督は「代表には常に新しい血が必要だ。そうしないとW杯に出続けられない」と説く。だが、短期間で結果を求められた西野監督には、若い世代の選考や起用に前向きに取り組む余裕はなかった。大会2カ月前の監督交代で長期的な視野を失った弊害が、若手へのしわ寄せになって表れた。

 大会後、長く主将を務めた長谷部が代表引退を表明し、本田も代表から退くことを示唆した。世代交代はいや応なしに迫る。西野監督は5日の帰国会見で「次のカタール大会で16強を突破できる。そういう段階にある」と期待しながらも、大きな宿題を残したまま7月末で退任する。

 「もっと若い選手が出てきて、ポジションを与えられるのではなく、自分から奪わないと」と吉田。20年には東京五輪も控える。主力を押しのける新世代の台頭とともに、日本協会には4年後のカタール大会を見据えたチームづくりの指針が求められる。 (浅井俊典)

中日新聞 東京新聞

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