7月6日

<西野ジャパンの奇跡と軌跡>(3)実だけ取った16強、次世代は…

 西野監督が選択したのは経験だった。平均28・3歳の最高齢ジャパン。惨敗した4年前の「思い」を結集して16強入りした。だが、「経験」という「貯蓄」を食いつぶし、「投資」を怠ったとも言える。過去5大会では直近の五輪に出場した選手がW杯の舞台を必ず経験したが、今大会のリオデジャネイロ五輪組は0人。芽に水はやらず、実だけを取った16強だった。

 「Jリーグそのものの敗戦だった」

 リオ五輪を視察したJリーグの村井チェアマンが残した。その言葉は今大会にも当てはまる。ベルギー戦でJクラブの下部組織出身者(高校年代)は、吉田、酒井宏、原口の3人だけ。大迫、乾、柴崎ら全国高等学校体育連盟(高体連)組、街クラブ(FCみやぎバルセロナ)出身の香川で残り8人の先発は占められた。Jリーグ発足して25年を迎えたが、いまだに日本代表の中心を担ったのは高体連、いわゆる高校サッカー組だった。

 日本協会幹部は危機感を口にする。「本田らの時代までは才能が100番以内の選手がまだ高体連に流れていた。今はもう…全然、入ってこない」

 金の卵のほとんどは、Jの下部組織が抱えている。しかし、プロは養成できるが、W杯で活躍する選手への“ふ化”に成功した例はまれだ。効率、確率の低さは現実となって現れている。ノウハウも確立できていない。一方で、わずかな才能を高体連が拾い上げてきたがそれも限界を迎えているのが現状だという。

 しかも、2022年W杯カタール大会は4大会連続(09〜15年)でU−20W杯出場を逃した「空白の世代」が中核をなす年齢になる。31歳の長友は次大会を目指すことを明言しながらも「自分を押しのける選手を待っている」と本音も明かした。高体連組の本田、長谷部が代表引退を発表し、もう苦しい時に寄りかかれる柱はない。経験を食いつぶして得た16強。その裏で危機は確実に迫ってきている。 (占部哲也)

中スポ 東京中日スポーツ

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