7月5日

<光と影 西野Jの挑戦>(上)善戦の裏に埋めがたい差

後半ロスタイム、ベルギーに3点目を決められピッチに倒れ込むGK川島ら=2日、ロストフナドヌーで(岩本旭人撮影)

写真

 世界トップクラスのベルギーを瀬戸際まで追い詰めた。だが、最後は強国の「本気」に屈した。それでも、大会前には1次リーグで3戦全敗もあり得るとの声さえあったチームが、前評判を大きく覆す善戦。初のベスト8を一瞬、夢見るまでに至った。

 ハリルホジッチ前監督の解任で大会2カ月前から指揮を執ることになった西野監督は最初のミーティングでこう切り出した。「自分は世界を知らない。みんなの意見を聞かせてほしい」。前監督の解任理由は選手とのコミュニケーション不足。加えて、前任者は自身のスタイルを選手に強要するタイプだった。硬直化したチームを立て直すために、西野監督は選手との対話を重視する姿勢を打ち出した。

 岡崎は「一人一人が意見をぶつけることを監督が許してくれた」と明かす。考えの異なる選手同士も互いに意思疎通を図ることでチームとしての理念を共有できるようになった。チーム再建に不可欠な「結束力」が生まれた。

 西野監督には確たる信念があった。「個々の能力を素直に出せば間違いなくプラスに融合する」。選手の多くが欧州の主要クラブで活躍する歴戦のつわもの。連動性を高めることができれば、ハイレベルなサッカーはできる。左サイドで乾、香川、長友が絡む攻撃は滑らかで、柴崎の好機をつくり出すロングフィードやスルーパスも受け手とのあうんの呼吸を感じさせた。

 しかし、初優勝を狙う国際サッカー連盟(FIFA)ランキング3位のベルギーとの対戦では、それだけでは埋められない力の差を見せつけられた。「全ての面でベルギーが僕らを上回っていた。プレーの質、スピード、身体能力。世界とのぎりぎりの戦いにおいては勝てない」と長友。優れた「チームマネジメント」で日本代表を見事によみがえらせた西野監督だが、短期間での再建ゆえにサッカーの本質的な部分を向上させ、プラスアルファをもたらしたかといえば大いに疑問が残る。

 日本が初めてW杯に出場してから20年。確かな成長を遂げ、今大会も一定の実力を示したが、西野監督は強豪との差について「わずかであって、わずかでないかもしれない」と明確な答えを導き出せなかった。W杯でベスト8以上を狙える国になるには−。ベルギーとの激闘に沸く陰で、日本サッカーはまた同じ宿題を突きつけられた。 (浅井俊典、対比地貴浩)

 ◇   ◇ 

 日本代表の6度目となるW杯挑戦が終わった。予想外の躍進を見せた一方で、三たび16強で散った。大会目前に監督を電撃解任するなど曲折を経て挑んだ今大会。「西野ジャパン」の健闘の要因や浮かび上がった課題を検証する。

中日新聞 東京新聞

※ご利用のブラウザのバージョンが古い場合、ページ等が正常に表示されない場合がございます。

速報
ピックアップ
コラム・評論

Search | 検索