7月3日

<戸田和幸 Russia>引くだけではないロシアが8強

PK戦でスペインのアスパスのキックを止めるロシアのGKアキンフェーフ(ロイター・共同)

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 10対70。これは大会前に発表されたFIFAランキング、スペインとロシアそれぞれの順位だ。この数字は指標の一つでしかないが、両国の間にはサッカーの歴史、現時点での実力、それぞれに埋めることのできない大きな「隔たり」が存在していたことは疑いようもなかった。

 だが、ロシアは勝った。開催国として1次リーグを突破した勢い、そして彼らを後押しする8万弱の大歓声も味方に付け勝利を手にした。

 なぜか。理由は2つあると考える。1つ目はロシアの戦い方だ。1次リーグ3戦全てを4バックで戦ってきたロシアだが、この試合では5バックを採用。ペナルティーエリア前に分厚い人垣を作り徹底的にスペースを消すことでスペインお得意のコンビネーションによる突破を阻み続けた。奪った瞬間には前線のターゲットマンの高さを上手に活用しながら、スプリントで前線まで駆け上がりカウンターを仕掛ける。ひたすら守るのではなく、スペースを消したところから勇敢にボールを奪いに挑み、ロングボールを効果的に使って果敢にゴールを目指した。

 スタジアムに駆け付けた大観衆のみならず、国を挙げてのサポート、応援を受けたことも見逃せない。苦しい場面を迎えれば必ず怒号のような大声援が彼らの背中を押した。まさに12番目の選手として、ロシアサポーターは見事にその役目を果たし、快挙を達成した。

 もう1つの理由、それはスペインの戦い方だ。カウンターを警戒したイエロ監督は後ろに人を残し過ぎ、常に前線の枚数が足らない状態での攻撃が最後まで続いてしまった。初戦の2日前に監督交代という非常事態を経て大会に臨んだ「大国」スペインだったが、偉大な選手だったイエロでもわずかな監督経験だけでは、この大会で監督を務めることはできないのだと感じた試合でもあった。 (2002年W杯日本代表MF)

中スポ 東京中日スポーツ

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