7月2日

<目撃者>ナント優勝2度、名伯楽も注目

ベルギー戦に向け調整する香川=カザンで(岩本旭人撮影)

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 史上初の8強をかけて、MF香川真司(29)が、日本のストロングポイントを結果で示す覚悟を見せた。欧州でも認められた日本の俊敏性と香川のポテンシャル。世界の精鋭が競う欧州で「何が起こるか分からない世界」を体感してきた背番号10には、優勝候補の一角ベルギーを崩すイメージがある。

 香川の目の奥が光った。大番狂わせ。可能性を信じる力強さがあった。日本史上初となるベスト8進出。その前に立ちはだかるのは世界3位のベルギー。黄金世代と呼ばれる多士済々な面々をそろえる。だが、ベルギー戦を前に、こう語った。

 「1次リーグを突破するのは、決勝トーナメントで勝つ以上に難しい。逆にここからはすべてが起こり得る。力の差はそこまでない」

 もう10番の呪縛も、気負いもない。ゴールを取らなければ−という焦りも感じさせない。取材エリアでも下を向かず、堂々と胸を張る。1人でやるのではない。西野監督が言う「グループ」で崩す。その中心を担う。今の香川を見るとそう感じ、欧州の名伯楽の言葉を思い出した。

 「日本の個性は俊敏性。アクションが『パッ、パッ、パッ』といける。香川を見ても持っている。一人の動きの効果が倍増、倍増、倍増されていく。5〜6人でそうすれば相手は止められない。言うのはシンプルだけど、やるのは難しい」

 ナントで優勝2回を誇るジャンクロード・スオードさん(80)だ。ハリルホジッチ前監督をフランスリーグ2度の得点王に導き、フランス代表のデシャン監督を10代の頃に才能を見いだした。1994−95シーズンは98年W杯優勝メンバーのマケレレ、カランブーを育てわずか1敗で優勝を飾った。フランスサッカー界の哲学者が注目したのは、本田ではなく香川だった。

 高度な技術を持つ香川を中継点に一つの大きなうねりを作り出す−。西野監督が強調する「グループ」戦術によって輝きを取り戻した10番は言う。「僕の欧州チャンピオンズリーグ(CL)の経験上、ベスト16、ベスト8は何が起こるか分からない。楽しみです」。クラブ最高峰の大会では通算4得点8アシスト。ゴールばかり目がいくが、実は仕上げのパスを得意とする。大番狂わせを起こす−。そのためにフィニッシャーに固執せず、つなぎ役となり相乗効果をもたらす10番が今、日本にはいる。(占部哲也)

中スポ 東京中日スポーツ

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