7月2日

<カットイン 西川結城>吉田が知る 勝利の近道

 日本にとってW杯3度目の決勝トーナメント。16強の相手は、ベルギーになった。

 タレントひしめく好チーム。その多くは、世界最高峰のイングランド・プレミアリーグでプレーする。過去の現地取材で何度も強烈な個性を見せつけられた。ロンドンで見たエデン・アザールは、鋭角なドリブルで並み居るDFを切り裂いていた。マンチェスターで目撃したのは、的確な技術とスピードに乗った突破で敵を圧倒する、ケビン・デブルイネだった。

 彼らと相対していたのは、吉田麻也。サウサンプトンの一員としてビッグクラブと対抗し、苦戦を強いられながらも体を張り、頭脳を駆使して対応した。

 こんな場面もあった。古豪のエバートン相手に吉田らは拮抗(きっこう)した試合を展開。統制の取れた守備で敵を封殺していた。しかし、試合終了間際に強靱(きょうじん)な肉体と身体能力を誇るストライカーが、吉田の眼前で宙に舞った。無理な体勢から放たれた打点の高いヘディングシュートが、ゴールネットを揺らす。そのFWこそが今はマンチェスター・ユナイテッドで活躍するベルギーのエース、ロメル・ルカクだった。

 抜きんでた個の力。ベルギーの最大の武器だ。吉田は日常からそれを突きつけられているからこそ、現実を肌で知る。「個人では、とてもじゃないけど止められない。いかに組織的に、味方と連動して守るか。彼らのすごさを、僕は誰よりも知っている。でも勝機は必ずある」

 愛知県豊田市にある名古屋グランパスの練習場。10代からリバプールに憧れ、「夢はプレミアリーグでプレーすること」と話していたあのころが懐かしい。青年はあれから目標を達成し、ついにはW杯の舞台で日本代表、そしてプレミアリーガーとしてのプライドを懸けた戦いに挑む。

 「堅守速攻、弱者のサッカーになってもいい。ただそれが、日本が勝者になる近道でもある」。日本のDFリーダー。味方をまとめ、束になり戦う。そして、難敵ベルギーを食い止める。 (サッカージャーナリスト)

中日新聞 東京新聞

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