6月28日

<ピッチの余韻 藤島大>敗退のポーランドは やけか、名誉の戦いか

 ポーランドはやけになるのか。それとも「名誉のための戦い」に奮い立つのか。その心理、反映としての戦い方はどうなるのか。

 自分が、アダム・ナバウカ監督ならと考えてみる。

 勝利しても「次」はない。ならば日本がどうしてくるかよりも自分のチームに集中する。分析で導かれる「こうすべき」ではなしに「こうしたい」サッカーを貫く。母国の人々を失望させたのだ。せめてスペクタクルな攻撃を気後れせず仕掛けよう。

 GKのウカシュ・ファビアンスキが心境を明かした。

 「日本戦はファンにささやかな喜びを与える機会だ」(プシェグロンド・スポルトヴィ紙)。ささやかな喜びを与えるためには、ささやかでない数のゴールが求められる。守りを繕うよりも前へ。

 と、ここまで想像して「いや待てよ」と思う。

 ナバウカ監督はこう思考をめぐらすかもしれない。

 日本が避けたいのは自身の消極性だ。きっと攻めてくる。慎重に布陣を固め、領内に引き込んで、氷を石が滑るようなカウンターで仕留める。賢く勝って「私は間抜けではない」と認めさせよう。

 また別の声が聞こえた。「もはやポーランドの監督に求心力はない。選手がしたいようにする」。これはこれで怖い。チーム競技ではドン底から跳ねる際のエネルギーがいちばん強い。

 さて日本は。「相手をのみ込む」か「相手の力を心から敬う」か。どちらかだ。中間の「なんとなく勝てる」は危ない。 (スポーツライター)

中日新聞 東京新聞

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