6月23日

<奥寺康彦の目>「戦術メッシ」限界

 アルゼンチンも攻めてはいた。守備はコンパクトにして非常に良くなった。ただどうしても個の力で打開しようとなり、パスワークが少なかった。とくにバイタルエリア(相手ゴール正面のエリア)。メッシも前半はこれまでになく動いて強引に攻めていた。だがほとんどクロアチアに止められていた。真ん中を固められたらなかなか崩せない。

 メッシはかつてのマラドーナと比較されるが、マラドーナはもっと周りをうまく使えた。ボールを引き出したり、良いパスを出したり。メッシはそういうプレーがほとんどない。所属するバルセロナでのプレーとも違い、味方を使いながらボールをもらうプレーもあまり見られない。メッシ中心のチームなのに、メッシが生きなければチーム全体も生きない。もっとメッシを生かし、メッシが周りを生かす。左サイドからいくつかチャンスをつくったが、単発的な感じだった。アルゼンチンは持っている力の6、7割しか出せていないのではないか。

 対するクロアチアは、中盤のラキティッチとモドリッチを中心とした攻守のバランスが非常に良かった。2人の動きに合わせて全体が押し上げる。ラキティッチがチェックにいけば全体が高い位置にチェックにいく。そうするとアルゼンチンはGKにボールを返すしかなくなり、苦し紛れのパスをするしかなくなる。

 クロアチアが全体をコンパクトに保つことでアルゼンチンは窮屈なプレーを強いられた。どちらもタレントを擁するが、チーム全体として本当に素晴らしかったのはクロアチアだった。あとは1トップのマンジュキッチが得点していればもっと良かったかもしれないが、全体をみても本当に穴の少ないチームだ。 (元日本代表FW)

中日新聞 東京新聞

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