6月21日

<目撃者>マイアミの奇跡を想起 でも同じ轍踏まない

コロンビア戦から一夜明け、笑顔を見せる西野監督=カザンで(岩本旭人撮影)

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 サランスクで「小さな奇跡」が起こった。スタジアムで少数派だった日本人サポーターの喜びの声が、圧倒的多数派だった相手サポーターのため息を包み込んだ。1996年アトランタ五輪でブラジルを破った「マイアミの奇跡」を想起させた戦い。22年前に五輪代表の監督、選手だった2人が、試合直後に同じ趣旨の言葉を発した。

 西野監督「同じ轍(てつ)は踏まない」

 秋葉忠宏(U−19日本代表コーチとしてスタンドで観戦)「大事なのは2戦目。今度は絶対やってくれると思う」

 アトランタ五輪とロシアW杯。初戦の番狂わせ以外にも酷似している点がある。南米、アフリカ、欧州と対戦する順番が同じ。秋葉コーチはアトランタ五輪2戦目のナイジェリア戦で痛恨のオウンゴールを献上し、試合にも0−2で敗れた。苦い記憶がある。だからこそ、焦点は2戦目。「経験を生かしてほしい」と思いを託した。

 南米の雄を倒した大番狂わせ後の公式会見。地元メディアが「ロシアでは伝統があり、成功するとお祝いする。チームはどんな形でお祝いするのか」と質問した。しかし、指揮官は乗らなかった。

 「優勝したのであればサランスクのメイン通りを全員でパレードをしたいが、されど一つ、勝ち点3を取っただけ。(1位通過による決勝トーナメント1回戦の)モスクワの会場まで取っておきたいなと思います」。お祝いはお預け。あくまで一つ目の目標は16強進出だからだ。

 対戦順は五輪と似ているが、異なる点もある。日程だ。当時は1、2戦が中1日で行われ、準備が間に合わなかった。だが、今回は中4日。しかも、日本はセネガル専門の分析担当を置き、研究も進めている。過ちを繰り返さない、要素はそろっている。

 日本代表は世界で戦うために、過去の失敗から学び、教訓として「たすき」をつないできた。しかも、今回は22年前、「奇跡」後に苦い経験をした当事者だ。

 それを生かすも殺すもセネガル戦次第。W杯でアジア勢として南米勢を初撃破、史上初のベスト8…。歴史を塗り替えていけば、サランスクの「小さな奇跡」の5文字は「奇跡ではなく必然の勝利だった」といつしか消えていくだろう。今後の西野ジャパンの歩みは、その挑戦でもある。(占部哲也)

<アトランタ五輪1次リーグVTR> 日本は初戦でブラジルに1−0で勝った後、第2戦でナイジェリアに0−2で敗戦。最終戦でハンガリーに3−2で勝ち2勝1敗とし、ブラジル、ナイジェリアと勝ち点6で並んだが、得失点差で3位となり、決勝トーナメントに進出できなかった。

中スポ 東京中日スポーツ

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