6月19日

<戸田和幸 Russia>論理性を越えた熱量の勝利

 インターナショナルレベルの選手たちに「論理性」を与え、全ての国際大会で結果を残してきたレーウ監督以降のドイツ。序盤から巧みなポジションチェンジを駆使し主に右サイドから敵陣深くまで侵入。1トップで出場したウェルナーのスピードを生かしつつ、ミュラーやケディラがペナルティーエリアまで侵入しクロスボールが届く。司令塔クロースが攻撃の進行方向を決め、エジルが変化をもたらした。

 先制点を奪うまでのメキシコは自陣に構えてブロックを形成するも、フリーにさせた大外のキミヒからのドイツの攻撃をうまく抑えることができなかった。「論理的」に見てメキシコの守備は決して機能していたとは言えなかったが、超満員で埋まったスタジアムに駆け付けた、まるでホームかと思わせるメキシコサポーターの後押しが彼らに与えた力は大きく、ギリギリのところまで食らいつき、体を投げ出し、ドイツの攻撃を食い止め続けた。

 そして、プランとして用意していたであろう、キミヒの後ろのスペースを狙ったカウンターで見事に得点を挙げた。前線に2人残した状態でドイツの攻撃を抑えるのは至難の業だったが、論理性を越えた異常なまでの熱量、そして局面の強度で大きく勝ったメキシコ。

 終盤逃げ切りを図る際には陣形を変えて対応する「論理性」も見せ、世界王者から素晴らしい勝利を手に入れた。

 ドイツは、大会前のテストマッチでもオーストリアに敗れるなど若干の不安を抱えていた。チーム全体のポジショニングやボールの動かし方、ゴールから逆算した攻撃など「らしい」場面は多かったものの、相手の強度と粘りに屈した形となった。レーウ監督に誤算があったとすれば、パフォーマンスが振るわない選手が多かったこと。どれだけ論理的に構築しても最後は人間がプレーするのがサッカー。その難しさを思い知らされた一戦となった。 (2002年W杯日本代表)

中スポ 東京中日スポーツ

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