6月18日

<蹴球分析 大住良之>アイスランドのような信念あるか

 W杯初出場のアイスランドがアルゼンチンと互角に渡り合った試合を見ながら、1998年フランス大会での日本の「W杯デビュー戦」も相手がアルゼンチンだったことを思い出した。

 日本のサッカーが長く「夢の舞台」と思っていたW杯。フランス・トゥールーズのスタジアムで日本の選手たちがその舞台に立ったとき、残念ながら、戦う準備ができていなかった。当時の岡田武史監督は知恵を絞り切って勝つための方策を模索したが、選手たちにはこのレベルで戦う経験が皆無だった。

 3連敗のW杯から20年がたち、6度目のW杯となる日本。過去5度は成功しては思い違いをし、失敗と成功の繰り返しだった。前回ブラジル大会の惨敗から4年間の準備はすっかり無に帰し、開幕2カ月前の監督交代による「一夜漬け」で臨むことになった今大会。過信せず真っすぐに自分たちの長所を出したアイスランドのような信念は、あるか。

 前に速く攻めるのがいいのか、パスを回してボールを保持すべきか。そんな表層的なことを議論している場合ではない。いま必要なのは、全身全霊で「サッカー」に取り組むことだ。

 サッカーは単純なスポーツだ。攻撃と守備しかない。ボールを持ったら攻め、ボールを失ったら守る。確実な状況判断が必要だが、まずは全員が切れ目なく攻守を繰り返すことに集中しなければならない。20年前と比較すれば、選手たちは格段に経験を積んでいるのだから。

 6度目のW杯は最悪とも言える準備状況で迎えたかもしれない。それを飛躍のチャンスに変える力は、選手たちの献身以外にない。あしたの初戦に期待しよう。

中日新聞 東京新聞

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