<戸田和幸 Russia>戦うビジョンあったロシア
サッカーでの成功にも野心を燃やす大国ロシアの威信をかけた初戦。サウジアラビア相手の快勝は、彼らが何をもってW杯を戦おうとしているのかよく見えた開幕戦だった。
アルゼンチン、スペイン、ブラジル、フランス。予選を戦うことのなかったロシアはサッカーにおける「大国」の胸を積極的に借り、時に完膚なきまでにたたきのめされても、本大会での成功を夢見てひたすらに強化を図ってきた。
開幕戦を迎えるまで7戦勝利なし。直前のテストマッチではトルコと引き分けたものの、ついに勝利の味を思い出すことなく本番を迎えたロシアだったが、そこには勝利に対する不安ではなく、強烈な「渇望」を全身から発し闘う姿があった。
世界的な選手もいないロシアは、強国とのテストマッチを戦いながら、いかに「組織」として対抗するかという部分に力を注いできた。
ベースはしっかりとした守備。この試合は4−4−2で臨み面白いようにサウジアラビアからボール奪取、鋭いカウンターでチャンスを演出した。敗れたサウジアラビアは常に「近く」の選手としかプレーをしなかったため、全くといっていいほど相手の守備陣形に穴をあけることが出来ず。一方、ロシアは常に「遠く」、もしくは「スペース」を意識した攻撃を見せ、前線のターゲットマンにロングパスを出せばすぐさまサポートに走った。
チームとして、いかにW杯を戦うかという「ビジョン」が存在したチームと、そうでないチーム。一方はコテンパンにされたとしても本番で結果を残すための準備をし、もう一方は優秀だった監督をスポーツとは関係のない理由で切り捨てた。その後、2人目の監督で臨むもW杯で勝つためのサッカーは全く構築できずに惨敗を喫した。
具体的で明確なプランもなしに勝てるほどW杯は甘いものではない。はたして、われわれの代表はこの日のどちらのチームとなるのか、そのことが頭をよぎった開幕戦となった。
(2002年W杯日本代表MF)
