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課題の現場から(4)子育て支援 放課後託児、諦めの母

2019年2月1日

働く親にとって、安心の拠点になっている子どもの家=春日井市内で

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 春日井市に三十三カ所ある市の放課後児童クラブ「子どもの家」。平日午後五時を過ぎると、仕事を終えた母親が次々とお迎えに訪れ、子どもたちと手をつないで帰っていく。

 一〜二月は新年度の利用申請の時期で、母親たちの不安が募る。低学年が優先されるため、学年が上がると通えなくなる児童が毎年少なからずいるためだ。

 二〇一八年度、市内で子どもの家の利用申請が不許可だった児童は二百七十七人に上り、一七年度より八十人増えた。小学二年の娘を通わせる女性(40)は「自宅で子どもに一人で留守番させるのは心配で、仕事中も不安にかられるかも」。許可されなければ働く時間を減らすか、仕事を辞めざるを得ないかもしれない。

 市は一九八〇年に子どもの家の事業を始めた。現在は三十七の小学校区のうち三十三校区にある。指定管理者が校舎の空き教室や公共施設を利用して運営。児童クラブのない四校区のうち一校区には住民有志の運営クラブがある。予算は市と国、県が三分の一ずつを負担する。

 利用者数は地域によって偏りがあり、十五校区では定員割れしている。だが、児童が校区をまたいで遠距離を歩いて通うのは難しいため、待機児童が生じてしまう。不許可の場合、市は民間クラブを紹介するが、料金は子どもの家が午後七時までの利用で月六千円(おやつ、教材費別)。一方、民間は月一万〜三万五千円で別に入会金も必要だ。市は民間施設へ通わせる世帯に月千円を補助しているが、差額は大きい。

 ある校区では母親たちが、子どもの家の受け入れ枠拡大を要望する署名活動を展開した。昨年五月から二カ月で市内四千二百人分を集め、市外の職場の同僚らも加わり、計七千人弱の署名を添えて市に提出した。

 署名活動の世話役を担った三十代の母親は「申請する以前に、現状では入れないだろうと諦めるお母さんたちがいっぱいいる」と署名数以上に深刻な事態だと訴える。

 市も手をこまねいているわけではない。昨年の夏休みには、市の単独予算で需要の多い二校区では追加で四十人を臨時募集。いずれも超過し、近隣で空きのある子どもの家にも回ってもらったが、約百二十人が利用枠から漏れた。市子ども政策課の担当者は「児童数の変動が毎年激しく、需要を見極めるのが困難。場所やスタッフの確保も難しい」と苦悩する。

 県内全体でも放課後児童クラブはこの八年間に二百カ所増えたが、待機児童も増えており、県の担当者は「想定を超える需要増に追いついていない」と話す。県としても運営主体の市町村や団体などをどう後押ししていくかが課題となる。(丸山耀平)

 <県勢メモ> 共働き家庭やひとり親家庭などの子どもが多く利用する放課後児童クラブ(学童保育所)の待機児童は2018年5月現在、県内で767人に上る。通っている登録児童数は5万7781人となり、この5年間で2万人増えたが、需要増に追いついていない。指導員の確保も課題で、昨年12月に国が配置基準緩和を示したことに保護者らから「保育の質が低下する」と反発が出ている。

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