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課題の現場から(2)障害者雇用 企業の柔軟対応が鍵

2019年1月30日

就労継続支援B型事業所で飾り物を作る精神障害の通所者女性=岡崎市内で

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 岡崎市内の就労継続支援B型事業所。音楽が流れ、時折笑い声も聞こえる。精神障害のある女性(53)は一年半前から、リハビリも兼ねてこの施設に通う。和やかな雰囲気の室内で、自動車の部品や星の飾り物を手作りしている。

 以前は一般企業で働いた経験もある。機会があればまた働きたいと思うが、「病院に通う日や、調子の良くない日がある。理解や配慮があるのか不安で踏み出せない」と明かす。「前はできていた仕事なのに、どうしてできないの。そう言われるのが怖い」

 県内の障害者雇用者数は、二〇一七年に初めて三万人を超えた。企業の法定雇用率も昨年四月に引き上げられたが、特に中小企業では障害者雇用の拡大を大きく進める動きは少ない。ハローワーク岡崎の職員も「企業の相談件数は、この一年で五件しか増えていない」と話す。

 大企業は障害者を受け入れる仕組みを自ら整え、特別支援学校などともつながりをつくっている。しかし職員によると、中小企業の中には、制度は知っていても、従業員数などの規定で自らの企業が障害者を雇用する対象だと認識していない例が多い。雇用する余裕がなく、二の足を踏む企業も少なくない。岡崎市の食品卸販売会社の社長は「雇用した方がいいという気持ちはある。だが仕事や給料、人員配置など一から制度を作るのは(時間や労力の面で)ハードルが高い。なかなか一歩が踏み出せない」と本音を明かす。

 障害者の中でも精神障害者には、さらに困難が立ちはだかる。ハローワーク岡崎によると、精神障害者は働いて稼ぎ、自立して生活する意思があることが多いが、障害者向け求人は就業時間が決まっているパートかフルタイム勤務が大半。障害者の就職相談を受ける担当者は「精神障害者は体調に波が起きやすく、企業側には身体障害者とは違う柔軟な対応がさらに求められる」と指摘する。

 一方、知的障害児が通う岡崎市のみあい特別支援学校の一木直哉教頭は「能力に応じてクラス分けし、就職訓練を受ける。現場実習も重ねてから就職先を決めるため、企業側とのミスマッチングが比較的少ない」と、精神障害者の就職支援との違いを説明する。

 ハローワーク岡崎に昨年登録した障害者は計千二十人。このうち就労相談が最も多いのは精神障害者で六割を占める。「精神障害者は元々就労経験がある人が多く、能力も高い。しかし彼らが安心して働ける求人はなかなかない」。職員の嘆きが、進まぬ障害者雇用の現状を表している。

(細谷真里)

 <県勢メモ> 県の障害者雇用率(民間企業)は6年連続で上昇。2017年6月現在で1・89%だが、全国平均の1・97%を下回る。法定雇用率は昨年4月に2・0%から2・2%に引き上げられ、21年には2・3%となる予定。対象となる従業員数45・5人以上(短時間勤務者は0・5人)の県内企業の3割が1人も雇用しておらず、その99%以上が従業員数300人未満の中小企業。

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