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能登半島地震特集

二度目の夏−能登の被災地から(5) 教訓伝える使命

「頼まれれば講演するのは惜しまない」と頑張る安藤さん=石川県輪島市河井町の朝市通りの安藤下駄屋店で

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朝市支えた 人のきずな

 「最後は人と人の心のつながりこそが、困難を乗り越える原動力です」。七月初め、石川県輪島市のホテルで、地震体験について講演した朝市組合長の安藤登允(たかよし)さん(72)は、こう締めくくった。

 全国各地から、震災復旧後の朝市を視察する団体が訪れる。安藤さんは「教訓を一人でも多くの人に伝えることが、被災したわれわれの使命や」と、講演を頼まれれば快く応じている。講演も十回ほどを数えた。

 輪島市朝市通りに面した自宅で、げた店を営む。昨年三月二十五日の朝も店頭に立ち、にぎわい始めた通りを見ていた。突然の激しい揺れに襲われ、振り返ると店が倒れそうになっていた。店内は陳列棚から商品がガラガラと崩れ落ちた。

 安藤さんは妻礼子さん(73)と無事を喜び合うと、店の片付けもそこそこに、民生・児童委員として一人暮らし高齢者の安否確認に駆け回った。

 「被災するまで能登半島には地震はないものと信じ込んでいた。まったく心構えはなかった」。講演のたび、安藤さんはこう切り出す。隣近所の助け合い、それに全国から駆けつけたボランティアとの交流…があればこそ、今の復旧があるのだとも明かす。

 地震から十七日目、朝市は早期の再開にこぎつけた。この喜びもつかの間、輪島市観光協会副会長として震災復興をアピールするため、東京、大阪、九州へと奔走した。

 愛知県の「あいち防災リーダー会」(早川澄男会長)が、輪島市で開いた会員四十四人の研修会。安藤さんは身ぶり手ぶりを交え、「やはり地域の人の結び付きが大切だ」と強調した。参加者からは「当事者ならではの力強さのある話だった」「これから防災に取り組むパワーをもらった」との感想が寄せられた。

 二度目の夏、朝市には震災前の人出が戻ってきた。「能登の体験が少しでも役立ってくれれば」。安藤さんは全国から受けた支援へのお礼として、地震の“語り部”で協力しようと思っている。

 (輪島通信局・石本光)

 

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