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能登半島地震特集

二度目の夏−能登の被災地から(3) 90歳 支援の先頭

災害ボランティア支援友の会を発足した山下良演住職=石川県穴水町の来迎寺で

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6寺院結束で“恩返し”

 七月中旬に石川県穴水町の来迎寺であった「災害ボランティア支援友の会」の設立会議。「国内外の災害で活動するボランティアを助けたい」。同寺住職山下良演さん(90)は、宗教者を前に力強く呼び掛けた。

 「友の会」は、能登半島地震で被災した輪島市と七尾市、穴水町の六寺院が宗派を超えてつくった。ボランティアに情報や資金を提供するのが狙いだ。

 山下さんは発起人代表。「寺の坊さんはこうゆうことをせなあかん」と先頭に立つ。活動を始めたのは、能登半島地震がきっかけだった。

 昨年三月二十五日。大きな揺れに驚いた山下さん。外に出ると、傾いた鐘楼が目に飛び込んできた。その脇では約百四十体の水子地蔵がことごとく倒れていた。

 約一週間後、横浜市の寺から仲間数人がやってきて、地蔵をすべて元通りにしてくれた。費用の不安を口にした際、彼らの言葉に驚いた。「ボランティアやから一銭も要らん」

 「こんな良いことをしてくれるなら、うちの寺にもつくれるといいな」。山下さんの行動は早かった。地震から約二カ月余り後の昨年六月、「友の会」の母体ともなった「来迎寺ボランティア会」を誕生させた。

 高齢のため、被災地での力仕事は難しい。会費を集め、災害時の支援金を積み立てる方式にした。会費は月百円。山下さんは「小学生でも入れる額にした」と笑う。

 現在の会員は檀家(だんか)ら五十人。昨年七月の新潟県中越沖地震では、被災地に五万円を送った。

 当然、地元住民への目配りも忘れない。現在も愛用のミニバイクにまたがり、被災者宅を訪ねて声を掛けるほか、真言宗の僧侶らでつくる足湯ボランティア「高野山足湯隊」(代表は金沢市の辻雅栄・宝泉寺住職)に寺の離れを提供。道具の保管などを買って出ている。

 「助けてくれた人たちから頑張ろうという力を出させてもろうたから、お返しせなならん。自分の活動がもっともっと広まるといい」。山下さんの思いは熱い。 (報道部・高橋雅人)

 

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