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能登半島地震特集定点ルポ 被災地を歩く 能登半島地震1年(5) 穴水・川島 人の縁 商店街に光
リベンジ(雪辱戦)の「焼きガキ」だった。あの日、準備中に大きな揺れに襲われ、中止となった地域おこしの焼きガキイベント。二十二、二十三の両日、石川県穴水町川島の商店街で、一年ぶりで開催にこぎつけた。 穴水町商工会駐車場の会場。昨年三月二十五日、穴水商店振興会が初めて企画したイベントは、午前九時の開始から間もなく、悲鳴に似た声が交錯することとなった。会場隣の土蔵は崩れ、家族らの安否確認で人々は離散した。 そして一年。靴店を営む加藤真さん(47)ら商店主らは再び、駐車場に炭火焼き用コンロを並べた。「あの時、割れたショーウインドーから飛び出した靴を片付けながら、皮肉なもんだと思った」。加藤さんは商店街再生への取り組みを思い起こす。 過疎化のため人通りが途絶えた商店街。加藤さんが中心となり、二〇〇五年八月から市街地を流れる真名井川沿いでキャンドルを飾り、映画上映会を核にしたイベントに取り組んできた。 「あの地震は、あえて現実を見ないようにしてきた商店街の問題を浮かび上がらせたと思うんです」と加藤さん。商店主の高齢化と後継者難や、空き店舗の問題。いずれも一朝一夕には解決する問題ではない。 しかし震災後、町商工会で週一回、復興を話し合ってきたサロンで有意義な出会いがあった。京都大防災研究所や名古屋の災害ボランティア組織、町内で花時計を計画している石川高専の学生たち、さらには新潟県中越地震で被災し、同じく復興の道を歩んでいる新潟県川口町の人たちだ。 「人のつながりができたことが収穫だった」。町外グループとのつながりを光明に、加藤さんたちは、商店街復興に向けて新たな歩みを始めている。 (穴水通信部・島崎勝弘) =終わり
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