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能登半島地震特集

定点ルポ 被災地を歩く 能登半島地震1年(1) 輪島・門前 商店街戻った日常

多くの店舗や住宅で地震後の改修が終わった総持寺通り商店街=石川県輪島市門前町で

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なお残る生活の不便さ

 正直、見るのがつらいと思った。祖父が酒店を営んでいた石川県輪島市門前町の総持寺通り商店街。見慣れた風景が震災後、変わり果て、大きなショックを受けた。以前は毎月のように訪れていたが、被災直後、祖父が亡くなり、仕事以外では足が遠のいていた。

 三月初め、約半年ぶりに訪れると、発生直後の目を覆いたくなるような惨状から一変していた。純和風の建物が並び、落ち着いたたたずまいが出迎えてくれた。

 「きれいになったでしょう」と晴れやかなのは、薬局を営む五十嵐義憲さん(60)。全半壊した三十九店舗のうち、二十八店舗の修理が済んだ。「ようやく被災前と同じ日常に戻った」と五十嵐さん。それでも、昨年末まで台所など水回りの修理ができず、不自由な思いをしたという。

 商店街を歩いて話を聞くと、修理業者の不足感は否めず、まだ応急処置のままという家や店も何軒か目に付く。

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 商店街沿い、梶井百合子さん(67)の自宅には、現在も五カ所に筋交いが入ったまま。お客さんが来た時は、屋内の移動が大変らしい。それでも、「住める家があるだけでも」と、謙虚な姿が印象的だ。

 通りで今も改修工事が進む築百年以上の建物。足場に掲げられた業者の告知板「作業主任者」欄に、中学校時代の同級生の名前を見つけた。正月の同窓会では、仕事の話は出なかった。しかし、復興に向けて頑張っている同級生がいると知り、元気がわいてきた。 (報道部・泉竜太郎)

    ◇

 能登半島地震から二十五日で一年。被災地の定点・五カ所を担当記者が半年ぶりに歩き、町並みや商店街の移ろいをルポする。

 

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