トップ > 北陸中日新聞から > 能登半島地震特集 > 記事一覧 > 2月の記事一覧 > 記事
能登半島地震特集震災復興 格差是正につながるか「補助金依存症になると、なくなった時に麻薬が切れたようになり、かえって逆効果だ」。能登半島地震からの復興元年と位置づけた二〇〇八年度石川県当初予算案がまとまった二十日、県庁で記者会見した谷本正憲知事は、冒頭の例えに続き「被災地の皆さんには基金による五年間の補助にずるずる頼らず、二年ぐらいで立ち上がる決意を持ってほしい」と強いメッセージを放った。 県は予算案説明資料のトップ項目に「震災復興」を掲げ、被災地支援に全力で取り組む姿勢を打ち出した。住宅再建支援、輪島塗などの地場産業支援、特産品の販路開拓など復興事業はめじろ押しで、多くは復興基金と中小企業支援復興基金を活用する。基金の運用益は五年間活用できるが、五年を待たずに本格復興を軌道に乗せるためには、被災地の自助努力も不可欠との考えが知事にはあるようだ。 ただ、幸い地元産業界から次々とアイデアや積極的な要望が寄せられている。会見で谷本知事は「今後も前向きな提案があれば、しっかりサポートしたい。基金は新年度が最終年度だという気持ちでどんどん前倒し活用してほしい」と述べた。 谷本知事は「一年が経過する三月二十五日は、復旧から復興への大きな節目にしたい」とも語った。震災を総括した反省点は五月に見直す地域防災計画に反映させ、秋に羽咋市で行う防災総合訓練の内容にも生かす。本格復興への歩みを確かなものにしたい、そんな願いが予算案にはこもっている。 しかし、地震の影響はまだ色濃く残る。県によると、風評被害の影響で県内主要七温泉地の観光客入り込み数は昨年四〜六月は前年同期比16・1%減、同七〜九月が同7・7%減、同十〜十二月は同4・9%。減少幅こそ小さくなっているが、前年比マイナスは続く。 奥能登地方の住民は「地震がなくても加賀との格差は明らか。震災の傷跡は簡単に消えないだけに県の支援に期待する」と話し、若者の流出に歯止めがかからない現状克服も課題に挙げた。最近の有効求人倍率をみても、加賀地方で一・五倍超の地域がある一方、能登は〇・六倍と一倍を大きく割り込む地域もあり、格差は歴然だ。 能登地方のある県議は予算案を「復興支援は目立つが、じっくりみると農林漁業を根付かせたり、若者の就職口確保など抜本的対策は見当たらない」と分析した。復興支援策を格差是正にどうつなげていくか、難問は積もっている。 × × 「県民の安全・安心と活力向上への予算」−。二〇〇八年度石川県当初予算案を谷本正憲知事はこう表した。苦しい台所事情ながらも行財政改革を進め「能登半島地震の本格復興に向けた施策と新長期構想の具現化に重点を置いた」という予算案を点検する。
|