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能登半島地震特集残そう輪島の町並み 修復へ調査進む
被災の伝統家屋 有志の建築士ら能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市で、被災した建築物のうち伝統あるものは取り壊す前に修復するなどし、できるだけ守ろうと検討する動きが、民間の有志の間で進みつつある。旧輪島市内の土蔵や、旧門前町黒島地区の民家などで調査を進め、住民と連携しながら再建の方法を探っている。 (能登通信部・上野実輝彦) 輪島市河井町のあての家では六日、土蔵の修復支援活動を進めるグループの報告会が、被災住民を招いて開かれた。県内の建築士らでつくるグループは震災直後から、関西方面の左官職人やボランティアの研究者らを招いて土蔵の被害調査を進め、取り壊さずに修繕する方法を模索してきた。 報告会では、調査した三十九軒の土蔵七十四棟のほとんどが修復可能とした上で、費用や工事期間の異なる複数の修復案を提示。さらに遊休化している物件を賃貸して活用する方法も提案し「土蔵は塗師文化の伝統が残る輪島の象徴的な存在。解体前に検討してほしい」と呼びかけた。ただ金銭的負担から解体を考える所有者もおり、グループの運営メンバーでまちづくりコーディネーターの水野雅男さんは「建物やまちづくりの価値をより知ってもらえるようにしたい」と話す。 港町として栄え、独特の建築様式の民家が残る黒島地区でも、被災家屋を保存する動きが始まっている。同地区出身で東京で会社を経営する板本勝雄さん(69)は、傾いた家を鎖で補強しながら修復方法を探る。市内の建築事務所主宰萩野紀一郎さんらのアドバイスを受け、地区をあげた保存活動を目指す。萩野さんは「価値ある建築物を、できるだけ元の形で残せるよう協力したい」と話している。
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