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能登半島地震特集住民の井戸枯れる 半世紀の思い出いっぱい
能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市門前町黒島の此花地区で、半世紀にわたり住民に水を供給してきた「黒島此花町簡易水道」の井戸水が震災後に枯れた。29日現在、同地区は上水道の断水が続いており、復旧のめどは立っていない。住民は二重のショックに頭を抱えている。 (小松支局・小柳悠志) この簡易水道は、黒島に上水道が開通する前の1956(昭和31)年に17世帯が出資し、完成した。電動モーターで水を高さ約5メートルまでくみ上げ、水圧で各戸に供給する仕組み。 現在もポンプの電気代や修繕費は、供給先の11世帯が共同負担。利用者の片山昭子さん(67)は「上水道の水は料理に使わない。井戸水を使った方がずっとおいしく仕上がる」と話す。 地震で土台に大きなひびが入り、高さ約6メートルのタワーが傾斜した。2日目の昼から水が出なくなり、断水後の貴重な水源が絶たれた。黒島の他の地区の井戸も枯れたことから、地中の構造に変化が起きたことも考えられるという。 「井戸は自然の変化に敏感だったのだろう」と管理代表者の濱岡達夫さん(79)は肩を落とす。片山さんの長男稔さん(41)は「上水道が復旧すれば、日常生活には不自由しないだろうが、簡易水道には人々の思い出が詰まっている。再び水が出るなら、井戸を立て直したい」と話している。
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