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能登半島地震特集「元気な和倉に」復活へ奮闘 旅館再開 まだら模様
全国でも指折りの温泉地として知られ、年間約100万人が訪れる石川県七尾市の和倉温泉。能登半島地震は、春休みの観光シーズン真っただ中に発生し、源泉を各旅館に引く配管が破損した温泉地は、大打撃を受けている。地震から3日目の27日、復旧に向けて奮闘する旅館関係者らを取材した。 (七尾支局・増井のぞみ) 「プロが選ぶ日本のホテル旅館・百選」で27年連続日本一の旅館「加賀屋」。地震で外壁の一部に亀裂が入り、給水管が破裂した。ふだんは来客と出迎えの従業員でにぎやかな玄関前は現在、工事用の足場を組む鉄パイプや鉄板が積まれ、ヘルメット姿の作業員がせわしなく行き交う。 鳥本政雄常務取締役(59)は淡々と話す。「これだけはうらんでもしゃあないです。お客さんがけがをしなかったのが良かった」。工事は24時間体制。補修に10億から15億円かかるが、「申し訳ないとお客さんにキャンセルの電話をすると、頑張ってくださいね、復旧したらすぐ行きますからねと励まされた」と笑顔もみせた。営業再開は4月25日ごろを予定している。 地震直後、温泉地は各所で、電気や水道などが停止。配水管の破損で館内が水びたしになったり、源泉から湯を引くパイプが壊れ、大半の旅館が休業に追い込まれた。 しかし、27日にライフラインがほぼ復旧。27軒のうち11軒が営業にこぎつけた。 営業を再開した旅館「美湾荘」の多田計介社長(55)は「観光地としてのステータスを守るために、いち早く復旧したかった」と、あんどの表情を浮かべる。早速訪れた台湾人の会社経営陳智能さん(48)は「能登半島は海の景色がきれいで大好き。輪島に行けないのは残念ですが、温泉が楽しみ」と話した。 一方、家族経営の旅館「海月」は4月半ばまで予約を断り、地中の配水管やボイラーの給湯管などの修復を急ぐ。経営者の三崎睦雄さん(63)は「すぐに復旧したいが、状況が深刻」と顔を曇らせる。源泉かけ流しが自慢のため「何とか風呂場だけでも直したい」と懸命だ。 和倉温泉旅館協同組合の大井徳秀理事長(59)は「どの旅館も1日も早い再開を目指している。地震の終息宣言と同時に、元気な和倉温泉をアピールしたい」と語った。
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