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能登半島地震特集

助けて認知症の夫 73歳の妻 避難所で苦悩

視察に訪れた平沢勝栄内閣府副大臣(右)らに土下座して懇願する的場さん=石川県輪島市門前町で

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 「私一人ならここにおればいいけど、認知症の夫が心配や」。能登半島地震で自宅が倒壊し、石川県輪島市の門前会館で避難生活を送る的場きりさん(73)=同市門前町=は、慣れない避難所暮らしと夫の介護で二重の重圧に苦しんでいる。国は2005年に「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を策定し、災害時に認知症の人らを保護する施策を各自治体に求めている。しかし、今回の被災地はこのガイドラインに沿った対策が進んでおらず、“弱者”支援の脆弱(ぜいじゃく)ぶりが浮き彫りになった。 (東海本社報道部・中崎裕)

 「1日も早く元の生活に戻れるようバックアップしたい」

 27日午後、門前会館を視察した内閣府の平沢勝栄副大臣が、的場さんら被災者を励ました。的場さんは副大臣に駆け寄り「(支援を)よろしくお願いします」と涙を流し、土下座した。

 的場さんの夫一男さん(75)は約2年前、認知症の症状が出た。週4日はデイサービス施設を利用する。しかし、地震後に門前総合支所を通じて民間の福祉施設への入所を依頼したところ、「満員で預けられない」と断られた。

 一男さんは下剤を飲まないと排便できない。的場さんは「(避難所に)水洗トイレがないから夫に下剤を飲ませられない」という。倒壊した自宅から数百メートル離れた畑の中の納屋は無事だったため、「仮設住宅が建つまで納屋にいるしかない。私一人ならここにいればいいんだけど…」と顔を曇らせる。

 輪島市は、災害時に要介護者など特別な支援を必要とする人のリスト作りの不備を認めている。民間の福祉施設を活用する「福祉避難所」についても「個別に施設と話していたが、まだ協定は結んでいない」とする。

 市の担当者は「能登に地震はないと思っていた。対策に遅れがあったのは否めない」として27日、要介護者などの実態調査と相談への対応を始めた。

 <災害時要援護者の避難支援ガイドライン> 2004年7月の豪雨災害などを契機に、災害時の避難に支援が必要な高齢者や障害者などの対策として、国が05年3月に策定した。自治体に対し、要援護者情報を集めて台帳などを作成、福祉や防災の部局などが対策を講じるよう要請している。避難所での生活が困難な人のために、事前に民間の福祉施設と協定を結んだり、個別に具体的な支援計画を定めたりすることなども求めている。

 

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