トップ > 北陸中日新聞から > 能登半島地震特集 > 記事一覧 > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

能登半島地震特集

「緊張で痛みないけど」 新潟の赤十字医師巡回診療

被災者のお年寄りを巡回し、話を聞く内藤万砂文・救命救急センター長(左)=26日午後、石川県輪島市門前町で(畦地巧輝撮影)

写真

 能登半島地震で最大の被害を出した石川県輪島市門前町を26日、新潟県中越地震で被災者の治療などにあたった長岡赤十字病院(同県長岡市)救命救急センター長の内藤万砂文医師(53)や看護師らで構成する救護班が訪れ、お年寄りを中心に住民の体や心に変わりはないかを問診した。医師団は、家屋の倒壊のすさまじさを目にして度々、言葉を失ったが、朗らかに応じるお年寄りらの笑顔にホッとした様子だった。 (報道部・伊藤弘喜)

 全半壊など家屋の被害が特に大きい門前町道下地区。お年寄りが、玄関先で黙々と木片を片づけていた。「大変でしたね。何かできることはありませんか。薬もあります」。看護師が遠慮がちに声をかけた。「いやあ、大丈夫です。ありがとう」。お年寄りの気丈な返事に、看護師の表情が緩んだ。

 同町鹿磯では、若い母親が軒先で赤ちゃんを抱いていた。「かわいい子ですね。何か変わったことはないですか」と話しかけると、母親は「倒れてきたたんすを、この子をかばうために背中で受けた。体が緊張しているせいか痛みはないけど」。救護班は念のためにと、痛み止めを渡した。

 救護班は医師2人、看護師2人、事務員1人で構成。全員が2004年に起きた新潟県中越地震を経験しており、班長の内藤医師は「全国から素早い支援があったのが心の支えになった」と当時を振り返る。「だから今回もなるべく早くという思いがあった。地震のニュースを見てすぐに救急バッグを出した」。救護班は25日夜に現地入り。避難所に入り、徹夜で診療した。

 内藤医師は「中越地震で被害の大きかった新潟県の小千谷市や川口町より、家屋の損壊がひどい。なのにこれだけ死傷者が少ないのは奇跡」と驚く。もっとも「そのせいか全国の支援がやや遅れ気味。被災者は最初は気が張っていても、これから落ち込む可能性がある。これから心のケアが大事になる」と指摘した。

 輪島市によると、これまでに医療支援のため、全国各地から10団体余りが被災地入りした。27日には、金沢大学の医学生や看護学生ら計7人が、金沢市の城北病院の医師1人とともに同市堀町の輪島診療所で、住民のケアに当たる。

 

この記事を印刷する

北陸中日新聞から
石川
富山