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能登半島地震特集

「集落 守らないと」 輪島・門前の深見地区 孤立選ぶ住民も

「集落を守るために避難しなかった」と話す、板谷区長(左)ら深見地区の人たち=26日午後0時47分、いずれも石川県輪島市門前町深見

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 能登半島地震で大きな被害を出した石川県能登地方は26日も、断続的に強い余震に見舞われた。各地の避難所では震災後、2日目の夜を迎えた住民たちに疲労の色が濃くなっている。被災地では救援や復旧活動が始まり、物資も続々と届き始めたが、一方で、“わが家”を案じて避難を拒み、危険を冒して孤立した集落にとどまる人たちの姿もみられた。

 「このイヌを置いていけないじゃない」「泥棒が入らないよう集落を守らないと」

 地震による土砂崩れで孤立した石川県輪島市門前町深見地区。26日に取材で訪れた記者に、住民らは避難を断った理由を口々に訴えた。住民83人のうち64人は船で海岸伝いに避難したが、19人が残った。

 集落と外部をつなぐ2本の道路は、いずれも寸断。道を埋め尽くした土砂の山をやっとの思いで越えた。ひっそりとした集落は屋根瓦が散乱し、地面はひび割れている。家の玄関灯はつけっ放し。戸のすきまからのぞくと、倒れたげた箱が見えた。

 「そこは避難した。こんなに大きな被害は伊勢湾台風以来だ」。声を掛けられ、振り向いた。近くにある養福寺住職の高滝章さん(60)だった。

 地震で寺の山門は大きく傾き、石灯籠(とうろう)は倒れた。「室内もめちゃくちゃ。裏山が崩れそうで寺に入れない」。それでも「集落に人がいないと何が起きるか分からない」と残った。

 集落の端から端まで、歩いて5分足らず。出会った女性は、連れ歩く愛犬を指さして「こんなにうるさいのを避難所に連れて行けないでしょう」と話した。

 残った住民たちは26日朝から、道路の土砂を取り除き、がけの亀裂にビニールシートを張るなどした。区長の板谷弘さん(72)は「ようやく軽自動車なら通れるようになった」と胸をなで下ろす。

 午後になると、避難した住民も船で戻り、手伝った。谷口一郎さん(72)は「市は、危険だから、住民は一切手を出さないでくれと言うが、任せておいても何もやってくれない」と不満を口にした。 (報道部・加藤裕治)

 

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