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能登半島地震特集

余震不眠…帰りたい お年寄り弱気な声 避難所2日目

 「病気でないけど、病気みたいな気持ちになってしもたわ」。能登半島地震から2日目の夜。大きな被害が出た石川県輪島市門前町の避難所で過ごすお年寄りたちから、弱気な声が漏れた。会話は途絶えがちで、夕飯もそこそこに横になる姿も。わが家を失ったショックに、収まらない余震がストレスに輪をかける。

 約300人が避難する同町の諸岡公民館では午後7時すぎ、お年寄りたちが毛布にくるまり始めた。ある女性(80)は「昨夜は一睡もできなかった。いろいろ考えると、余計に疲れる」と、無理して目を閉じていた。

 「左ひざがむくんでパンパン。痛くて立ち上がるのもやっと」。酒井ちづさん(87)はため息をついた。自宅は骨組みだけが残った。日中に片付けのため帰宅したが「余震でグラグラして気味が悪い」と、1時間ほどで避難所に戻った。避難所は倒壊の心配がなく、暖房完備で炊き出しもある。しかし、酒井さんは「心の底から落ち着く静かな時間がほしい。家に帰りたい」と繰り返した。

 断水が続く同公民館は館内トイレを閉鎖し、玄関前に仮設トイレを設けた。足腰の弱いお年寄りは「距離が遠くなった」とぼやく。用を足す時にしゃがみ込む和式のため「トイレが億劫(おっくう)になった」との声も聞かれた。

 お年寄りたちは「命あっただけ、ありがたいと思わないかん」と口にするが、避難所生活は心身ともに負担になっている。 (報道部・前口憲幸)

 

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