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能登半島地震特集家、気にかけ長い夜 輪島・避難所ルポ肩を寄せ合い、重なり合うようにして眠った被災者たちが26日、避難所で朝を迎えた。震度6強の地震に見舞われた石川県輪島市門前町では、計約1530人が急きょ設けられた狭い空間で不安な夜を明かした。「つぶれた家のことを思い出すとつらくて」。一緒に夜を過ごした記者に、お年寄りらは現実と向き合うのが怖い、と打ち明けた。
余震の恐怖は夜通し続いた。グラッとくるたび、肩をすくめる人も。毛布にくるまって眠る幼い姉弟を、目に涙をため見つめるお年寄りもいた。町内24カ所の避難所のうち、最大の約300人が寝泊まりした諸岡公民館。大会議室も資料室も足の踏み場がないほどの人であふれた。 「家におっても余震がおとろしい(恐ろしい)から来た」。宮下なつこさん(75)が話した。池端みつさん(80)は「もう家には入れん。足と腰が痛い」と、か細い声で答えた。 午前3時前。「寒くて寝れん」。北林しず子さん(70)は石油ストーブから離れない。トイレに行った時、靴下をぬらしたといい、足元は素足のままだった。 避難者は圧倒的に高齢者が多い。せき込む人、つえを頼りに歩く人、常備薬を忘れたと訴える人がいた。携帯電話を持つ人が少なく、家族との連絡が取りにくいのも、不安をさらに募らせているように映った。 長い夜が明けた。「あったかいもんを口に入れたら落ち着いた」。地元の女性たち手作りのおにぎりをほおばった避難者たち。やっと笑顔がこぼれた。「こんな時こそ、力を合わせないと。わが家を見ると落ち込むけれど」。地元婦人会長の若松みえ子さん(66)は複雑な表情で語った。 (北陸本社報道部・前口憲幸)
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