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差別禁止、同性婚実現…各党が公約 LGBT理解へ法整備を

2017年10月20日 紙面から

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 衆院選では多くの政党が性的少数者(LGBT)に関する政策を公約に盛り込んでいる。LGBTの中には差別的な言動や、同性パートナーを認めない制度に苦しむ人が少なくない。当事者らは同性婚を認めることなど、法整備の必要性を訴えている。

 「この先、両親が亡くなった後の人生を楽しみにしている自分がいる」。愛知県内に住むレズビアンの女子大生(21)が悲しげに笑った。

 小学生の時、友達との雑談で初恋が話題に。みんなが同級生の男の子や父親を挙げる中、思ったままに「お母さん」と言うと、先生が「おかしい」と笑った。「言っちゃ、いけないんだ」。それ以来、恋愛話には本心を隠してきた。

 家族でテレビを見ていた時、同性愛のカップルについて祖父が「気持ち悪い」とつぶやいた。「巻き込めない」。家族には今もレズビアンであることを隠したままだ。

 両親のことは好きだ。でも、堂々と生きていけるのは、両親が亡くなってからだと思う。「家族の死後を楽しみにするなんて、と思うけど」

 せめて同性同士でも安定して生きていける保障があれば、両親を安心させられるかもしれない。「同性婚を認めるなどの政策を実現してほしい」と願う。

 連合が昨年、全国の二十〜五十九歳の男女千人に実施した調査では、LGBTの割合は8%。今回の衆院選で主要各党は公約にLGBTについての政策を掲げている。具体的には理解促進や差別禁止法の制定、性別適合手術の保険適用などだ。

 差別禁止法の制定を訴える「LGBT法連合会」事務局長代理の増原裕子さん(39)は「親にさえ理解がないことで、自尊心はますます弱まる。安心してカミングアウトできる環境が必要。法制定は、LGBTでも当たり前に生きて良いというメッセージを発信することでもある」と話す。

 LGBT自治体議員連盟世話人で東京・文京区議の前田邦博さん(51)は「先進七カ国(G7)で同性パートナーの法的保障がないのは日本だけ。差別禁止にデメリットはないのに、偏見が法制定の障壁になっている」と指摘。オリンピック憲章は性的指向を含めたあらゆる差別を禁止しており、前田さんは「二〇二〇年東京五輪・パラリンピックまでが、日本の制度や意識が変わるチャンス。できることから着実に進めたい」と話す。

 (井本拓志)

 <LGBT> レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、心と身体の性に違和感があるトランスジェンダーの頭文字を取った性的少数者の総称。同性同士の結婚は2001年のオランダを皮切りに、欧米や台湾などで容認の動きが広がっている。日本では15年に東京都渋谷区が同性カップルの公認制度を開始。世田谷区や三重県伊賀市なども導入している。企業や学校なども啓発に取り組んでいる。

主な政党の公約

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