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2017年10月12日 紙面から
最高裁裁判官の国民審査が、衆院選公示と同時に告示された。投票も衆院選と同じ二十二日に実施され、二十三日に結果が判明する。
最高裁の裁判官は任命後最初の衆院選で審査を受け、その後十年を経た衆院選時に再審査される。有権者は辞めさせたい裁判官の欄に×印を書き、有効投票の過半数となった裁判官は罷免される。何も記入しなければ「信任」とみなされ、×印以外の記入は全て無効となる。一九四九年の第一回からこれまで二十三回、延べ百七十二人が審査を受けたが罷免された例はない。
期日前投票も、衆院選の期日前投票と同じ十一日から始まった。前回まで開始日が四日ずれており、一度に済ませられなかった有権者から各地の選挙管理委員会などに苦情が寄せられていたが、昨年、最高裁裁判官国民審査法が改正され、期間が衆院選と同じになった。
22日の衆院選と同時に実施される最高裁裁判官の国民審査を前に、共同通信社は審査を受ける7人の裁判官にアンケートをした。再審開始決定が相次ぎ、誤判を生む刑事裁判の在り方が議論になっている。また、東京電力福島第一原発事故以降、損害賠償や稼働差し止めを求める訴訟が続いている。そこで(1)最高裁裁判官としての信条(2)冤罪(えんざい)を防ぐには(3)原発関連訴訟への姿勢−などを聞いた。
最高裁裁判官へのアンケートでは、衆院選の争点となる憲法改正や、死刑制度の是非についても質問した。ほとんどの裁判官は「国民が判断すること」などの理由で答えを控えた。
憲法改正について、刑事裁判官出身の大谷直人氏は「答えを控えたい」とした上で「憲法はわが国における法の支配の基盤。普段からそのありように国民の目が注がれるのは大切なことだ」と指摘した。
死刑制度に関しても「具体的な事件を離れて見解を述べるのは控えたい」(民事裁判官出身の小池裕氏)といった回答が大半。その中で、弁護士出身の木沢克之氏は「究極の刑罰であり、極めて慎重に適用されるべきもの」、外交官出身の林景一氏は「国際的な潮流も踏まえ、国民、その代表である国会で議論が深められるべきものだ」とした。
専門分野への思い入れがうかがえる回答も。刑事裁判官出身の戸倉三郎氏は、取り調べの録音・録画(可視化)や司法取引が盛り込まれた改正刑事訴訟法について「新制度で得られる証拠が事案解明に効果的であるほど、証拠としての適格性や信用性の判断も一層慎重に行わなければならない」と強調した。
民事裁判の現場が長い菅野博之氏は「子どもの人権確保や、多くの人々の利害調整が難しい事件が一番記憶に残る」と振り返った。
相次ぐ法科大学院の撤退について聞くと、長く大学で教えた山口厚氏は「さまざまな課題があることを痛感していた。関係者の地道な努力が実を結ぶことを願うばかりだ」と答えた。