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全国

減る投票所「車ない」悲鳴 無料送迎や臨時期日前、対策次々

2017年10月20日 紙面から

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 市町村合併や人口減の影響で、投票所の減少が続いている。二十二日投票の衆院選では全国で約四万八千カ所。ピークだった二〇〇一年の参院選に比べ一割減る。山間地などに住む高齢者からは「自力で投票所まで行けない」という悲鳴も。投票できない人が出るのを防ぐため、送迎する自治体が増えている。

 「この地域の高齢化がもっと進んだら、投票所まで行く足がなくなるのでは」。岐阜県関市板取の長屋守芳さん(77)は不安を漏らす。一五年の統一地方選から近くの投票所が廃止され、山道を約二キロ離れた投票所に行かなければならなくなった。しかし運転免許を今春返納し、交通手段がなくなった。

 市は先週、長屋さんが住む地域に二時間半限りの臨時の期日前投票所を設けたが、開設自体を知らなかった。二十二日は知人か親戚の車に乗せて行ってもらえることになり、「投票できそうで良かった」と胸をなで下ろす。

 投票所の減少は近年顕著になっている。高齢者ら交通弱者の権利を守るため、国は昨年、移動支援にかかる経費を全額負担することを決め、自治体に対して積極的に取り組むよう通達。昨年の参院選では、一三年の一・八倍となる二百十五自治体が移動支援に取り組んだ。

 岐阜県下呂市は一二年の市長・市議選で、投票所を六十六カ所から二十七カ所に減らした。このため民間業者に委託して、投票日に無料臨時バスを運行。毎回百人前後の利用がある。期日前投票のために路線バスを利用した場合も無料にしている。統廃合で、投票所が約八キロ離れた公共施設になった同市馬瀬川上地区に住む女性(78)は「とても便利。バスのおかげで、今まで何度も投票に行けた」と感謝する。

 三重県紀北町でも、投票所がなくなった地区の住民を職員が公用車で送迎している。利用するのは高齢夫婦一組のみだが、町選管担当者は「他の住民からも希望があれば応じたい」と話す。

 島根県浜田市ではワゴン車を使った移動期日前投票所を開設し、今回は五十五人が投票したという。

 神戸大大学院の品田裕教授(選挙制度論)は「自治体職員が減っており、投票所の数を維持するのは厳しい。国や地方自治体は移動支援の充実と同時に、将来的には郵便やインターネットを使った投票制度を探る必要があるだろう」と話す。

 (井本拓志)

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