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改憲なら平和主義強めて 広島の被爆者ら

2017年10月19日 紙面から

外国人観光客に核兵器廃絶を求める署名を呼び掛ける忍岡妙子さん(右)=広島市の原爆ドーム前で

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 二十二日投開票の衆院選では憲法改正を公約に掲げる自民が優勢で、野党の希望と維新などを加えた「改憲勢力」五党の議席が改憲の国会発議に必要な三分の二を超えることが有力視されている。戦争放棄などをうたう憲法九条の改憲が現実味を帯びる中、平和への特別な思いを持つ広島の被爆者らは、平和主義の今後を見詰めている。

 広島市中区の平和記念公園にある原爆資料館。被爆者の竹岡智佐子さん(89)は、修学旅行で訪れた埼玉県の高校二年生百六十四人に「市内は丸焼け。川は人の死体で埋まって水も見えなかった。ドブネズミが人の死肉を食べていました」と体験を語っていた。

 十七歳の時、爆心地から三キロの自宅で被爆した。母親は右目を失明。竹岡さんに大きなけがはなかったが、十九歳で出産した長男は、生後十八日で亡くなった。「医師からは放射能の影響と言われました」

 衆院選では自民のほか、希望、維新なども九条を含めた改憲論議を訴える。竹岡さんは「憲法は変えないでほしいけど、もし変えるのなら、憲法の平和主義を強める形になるよう、与党内の変化を期待したい」。

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 資料館には、昨年五月に訪れたオバマ前米大統領から贈られた、手作りの二羽の折り鶴が飾られている。竹岡さんは「現職大統領として初めてオバマさんが来た時はうれしかったけど、今の大統領はねえ」。北朝鮮への攻撃の可能性を口にするトランプ大統領の姿勢を嘆いた。

 川を挟んで公園の対岸にある原爆ドームで、ボランティアガイドの忍岡(おしおか)妙子さん(69)が核兵器廃絶を求める国際署名を呼び掛けると、英国人女性が応じていた。忍岡さんは「選挙では核兵器廃絶と憲法を守ることを大切にしてくれる人に投票したい」と話した。

 広島県では八月、北朝鮮のミサイルの上空通過に対応するため、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が配備された。ボランティアガイドの遠原(おばら)弘子さん(80)は「先制攻撃でも反撃でも、戦争は罪。ただ、北朝鮮のミサイルは日本を越えて飛んでいる。どのような判断が良いのか、結論を出しにくい時代だと思う」と複雑な胸の内を明かした。

 (清水祐樹)

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