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序盤情勢受け舌戦変化 首相、批判封印 小池氏、追及加速

2017年10月15日 朝刊

 衆院選は22日の投開票に向けて与野党党首の舌戦が熱を帯びた。自民党優位との報道各社の情勢調査を受け、安倍晋三首相は名指しの野党批判を控えて「安全運転」に徹する。希望の党の小池百合子代表は森友、加計(かけ)学園問題を踏まえ、首相の政治姿勢を「お友達優先」として追及のアクセルを踏み込む。立憲民主党の枝野幸男代表も「上から目線の政治と決別」を唱え「安倍一強」へのけん制に比重を置く。

 「『リセット』とかのスローガンではなく、私たちは『三本の矢』でデフレから脱却すると約束し、一つ一つ政策を実行してきた」。首相は十四日、香川県坂出市で街頭に立ち、小池氏が使うフレーズをやり玉に挙げつつ、直接批判は避けた。

 民進党が希望への合流を了承した九月二十八日には「選挙に勝つためだけに看板を替えた政党に日本の安全を託すわけにはいかない」と強いトーンを出していた。小池氏の名前を出さない点は一貫する。「小池氏は批判を受けるほど自分に注目を集めて、風へと変えていくタイプ」(官邸筋)と分析しているためだ。

 北朝鮮対応や政権の実績を強調するのは、首相の「傲慢(ごうまん)さやおごり」を浮き彫りにしたい野党に攻撃材料を与えない守りの作戦でもある。

 政権与党の一角を占める公明党の野党批判は厳しい口調が目立つ。山口那津男代表は十四日、小池氏が公約に掲げた大企業の内部留保への課税検討に関し「無責任な政策を訴える党に将来は任せられない」と言い切った。

 「おごりがある安倍一強政治に緊張感を与える。この国をリセットし、しがらみのない政治で大きく改革していく」。小池氏は十四日、神戸市の商店街で声を張り上げた。

 新党結成を訴えて「古い自民党」と差異化を図るのが小池氏の基本戦略だ。ただ選挙情勢もあって舌鋒(ぜっぽう)が鋭くなっている。十日の公示以降、首相が少子化対策として打ち出す消費税の使途変更を「そんなしょぼい話では、間に合わない」と切り捨て、森友、加計学園問題を安倍政権の「闇」と位置付けた。

 政権交代を前提とした「政権選択選挙」の言葉は使わなくなった。憲法改正や安全保障政策では保守層にアピールするため、自民党との違いは前面に出していない。希望関係者は「首相を強烈に攻め立てるぐらいしか、手がない」と焦燥感をにじませた。

 希望と選挙協力を実施する日本維新の会の松井一郎代表は「自民党をぴりっとさせる勢力が必要だ」と語り、首相には是々非々の立場で臨む。

 立憲民主党も首相の政治姿勢に矛先を向ける。枝野氏は十四日の街頭演説で「選挙だけ乗り切れば、情報は隠してごまかせばいいという、政治になっている」と強調した。「排除の論理」で追われた希望への批判は抑制気味だ。関係者は「敵はあくまで安倍政権だ。野党の共倒れを防ぐ」と狙いを明かした。

 共産、社民両党も首相への攻撃で歩調を合わせる。共産党の志位和夫委員長は安全保障関連法の成立強行などを挙げ「戦後最悪の政権だ。首相が居座ることが日本にとって最大の国難だ」と指摘し、首相が「国難突破解散」としていることを皮肉った。

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