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在外投票、時間ない! 急な解散…「諦めた人いるかも」

2017年10月14日 紙面から

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 安倍晋三首相の突然の解散表明から一カ月足らずで投票日を迎える今回の衆院選。短い選挙日程のため、海外に住む有権者の投票が間に合わない恐れがある。在外投票は手続きに時間や費用がかかるため投票率が低いほか、制度の周知にも課題が残っている。

 中国・北京。現地の大学に留学中で愛知県東郷町に住民票がある名古屋大法学部四年、樋口尚英(たかひで)さん(21)がため息をついた。「ネット投票も認めてくれたらいいのに」。地元の愛知7区は無所属前職の山尾志桜里さんと自民前職鈴木淳司さんの一騎打ち。全国的な注目区だけに「投票したかった」と悔しがる。

 在外選挙制度は国政選挙が対象だ。海外に三カ月以上住んでいる人が大使館などの公館を通じて選挙人名簿に登録し、証明書の交付を受けて投票。公館での直接投票のほか、日本で最後に住んでいた市町村の選管への郵送でも可能。証明書の交付には、二カ月ほどかかるという。

 ただ、選挙が迫っている場合は事前に登録していなくても、本人が希望すれば投票できる措置がある。名簿登録の申請時に郵便投票の手続きをし、二カ月待たなくても投票できる。それでも一定の時間がかかるため、今回の選挙では「十月初めまでに申請してもらう必要があった」(外務省の担当者)。九月二十八日の衆院解散から申請期限まで、海外の有権者に与えられた時間は一週間足らずだったことになる。

◆周知不足

 これに対し、市民団体「海外有権者ネットワーク・日本」代表の若尾龍彦さん(76)=川崎市=は「(措置の)周知が不十分。急な解散で登録を諦めた人もいるのでは」と推測。実際、名古屋市守山区から北京に赴任中の会社員田中高一さん(51)は「毎回『手続きしないと』と思っているうちに、つい忘れてしまう」と、事前登録なしの措置については知らない様子だ。

 総務省によると、公示前日の十月九日現在、在外選挙人名簿に登録している人は十万四百五人で、百万人強とされる海外有権者の一割ほど。過去の衆院選の在外投票率は20%前後で、全体の約2%しか投票しなかったと推計されている。

◆自己負担

 低い投票率は、郵便用の投票用紙の請求や郵送費用が自己負担であることも影響している。米ニュージャージー州に住む竹永浩之さん(51)は「自分の場合、一万円以上かかる。国内に比べてあまりに不公平です」。公館での投票も原則、公示翌日から最大でも投開票日の六日前に締め切られ、日本への輸送に時間がかかる南スーダンやソロモン諸島では今回、投票可能な日が二日間しかなかった。

 国も見直しに動いている。来年六月に改正公選法が施行され出国時に住所地の選管に申請すれば、海外での居住が確認できた時点で在外選挙人名簿に登録される。ただ、ネットワーク・日本の若尾さんは「実情を踏まえていない点はまだ多い」と話し、一層の改善を求めている。

 (衆院選取材班)

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